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特集記事 【イベントレポvol.5】「きちんと動けるチームを、セクターを越えてつくれるか」アスヘノキボウ小松洋介氏が語る、地域おこしのポイント-第4回みちのく復興事業シンポジウム-

地方創生のヒントin東北5987viewsshares2016.05.16

【イベントレポvol.5】「きちんと動けるチームを、セクターを越えてつくれるか」アスヘノキボウ小松洋介氏が語る、地域おこしのポイント-第4回みちのく復興事業シンポジウム-

2016年3月8日、「みちのく復興事業パートナーズ」とETIC.は、電通ホールにて、「みちのく復興事業シンポジウム」を開催しました。

東北の被災地では高台移転や復興住宅の建設が進む一方、まちや産業の復興はいまだ途上の段階にあります。しかし、東北ではこの5年間、さまざまな人々が集まり、さまざまな試みがなされ続けています。この復興という過程で、東北のみならず、日本の地方創生の契機が生まれつつあります。

地方創生において、企業は何ができるでしょうか? この日、東北復興に取り組む企業のコンソーシアム「みちのく復興事業パートナーズ」はゲストもまじえ、地方創生における企業の取り組みについて議論しました。

みちのく仕事では、 みちのく復興事業シンポジウムの内容の一部を6回にわたってお届けします。今回はその第5回。NPO法人アスヘノキボウ代表理事の小松洋介氏による、宮城県女川町でのまちづくりの取り組みの紹介です。

●みちのく復興事業シンポジウムのイベントレポート
【イベントレポvol.1】「東京より田舎のほうがリスクが少ない」『里山資本主義』藻谷浩介氏が考える、その理由とは?-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.2】「大切なのは、まず自分が幸せになる覚悟があるか」森の学校牧大介氏が語る、地域おこしに関わる人に大切なこと-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.3】りぷらす代表橋本大吾氏が取り組む、”支えられる側が支える側にまわる”福祉とは?-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.4】「漁師の仕事を新3K=かっこいい、稼げる、革新的に」フィッシャーマン・ジャパンの長谷川氏が描くビジョン-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.5】「きちんと動けるチームを、セクターを越えてつくれるか」アスヘノキボウ小松氏が語る、地域おこしのポイント-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.6】地方創生のために、企業ができることとは?-第4回みちのく復興事業シンポジウム

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小松 洋介 氏 - NPO法人 アスヘノキボウ代表理事宮城県 仙台市出身。2005年4月に新卒でリクルートに入社。震災を機にボランティアに関わり、地元宮城に戻ることを決意。2011年9月にリクルートを退職後、被災地の自治体、商工会、商工会議所、観光協会などをヒアリングを続け、東北に必要な長期的な支援は「産業の復興」と導きだし、その進捗に奮闘している女川町と出会い女川町復興連絡協議会戦略室へ入室。2013年4月、女川を中心にまちづくり、産業活性に取り組むNPO法人アスヘノキボウを立ち上げた。

小松 洋介 氏 – NPO法人 アスヘノキボウ代表理事
宮城県 仙台市出身。2005年4月に新卒でリクルートに入社。震災を機にボランティアに関わり、地元宮城に戻ることを決意。2011年9月にリクルートを退職後、被災地の自治体、商工会、商工会議所、観光協会などをヒアリングを続け、東北に必要な長期的な支援は「産業の復興」と導きだし、その進捗に奮闘している女川町と出会い女川町復興連絡協議会戦略室へ入室。2013年4月、女川を中心にまちづくり、産業活性に取り組むNPO法人アスヘノキボウを立ち上げた。

続いてNPO法人アスヘノキボウ代表理事の小松洋介氏はまず、自分たちの活動拠点である女川町は、新しいスローガン「あたらしいスタートが世界一生まれる町へ」を掲げていることを紹介しました。小松氏によれば、女川では現在、企業や行政といった壁を取り払った恊働活動が進んでいる、といいます。

「なぜこうなったか? 女川では震災前から人口がずっと減っていました。人口減少率が日本一の町になってしまっていました。そのなかでどうやってまちをつくっていくかが課題でした。震災前は、行政、民間、NPOはそれぞれ別に動いていましたが、このままではまちがなくなるぞ、という危機意識が震災後に出てきました。このとき、町長ははっきりとこう言いました。『行政は1円も稼いだことはない。民間を使うしかない』と」

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小松氏はアスヘノキボウの活動について、まちの行政と地元企業との間に入りながら、さらに地域外の各セクター、国や県、企業やNPOなどとをつなぎながら課題の解決に取り組んでいる、と紹介します。「セクターを越え、恊働事業をつくること。“ハブ”となるのが僕たちの仕事です」

具体例として、創業支援や移住支援、そして「健康と経済を動かすプロジェクト」などを小松氏は紹介しました。「漁師町は不健康なことが多いのです。健診を受けていない人もメタボの人も多い。医療費がすごくかさんでいるんです」。その一方で「この地域には豊かな食材がある」ことも小松氏は付け加えます。アスヘノキボウは現在、行政や製薬企業(ロート製薬)とも連携しながら、子ども食堂や料理教室、健診の促進などからなるプロジェクトを進行中です。「支援ではなくて、『いっしょに企てましょう』ということでやっています。成果は全部、データにして出します。ほかの地域でも応用していただけるように」

山内は小松氏に「アスヘノキボウは、自治体と深くかかわり、いろんな企業との恊働も進んでいますね。小松さんは女川でハブ的な役割を果たしていると思います。その秘訣は?」と聞きました。「そうですね、たとえば役割分担を明確にすること。女川の場合、政策や制度については行政がサポートしてくれます。私たちができない専門分野は企業さんがやってくれます。役割分担を明確にして、動けるチームを1つひとつの事業としてつくっている、ということが大きいと思います。どのパーツも欠けてはいけなくて、きちんと動けるチームを、セクターを越えてつくれるか、ということをかなり意識しています。たとえば、さきほどの健康プロジェクトについては、行政が主体でやるべき事業だと考えています。僕らはつい企業の目線で速いスピードで動かしたくなるのですが、役割とスピードを調整して、きちんと動けるようにすることを大事にしています」

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小松氏はまさに、基調講演で藻谷浩介氏が言っていたように、地方に「逃げた」のではなくて中心に入り込んでいったのだと思う、と山内は述べ、最後に「小松さんから見て、面白み、可能性は?」と尋ねました。小松氏はその答えとして次のように話しました。

「可能性はすごくあります。いまは人口が増えて経済が大きくなっていく社会ではありません。地域や社会の課題1つひとつをどうやって解決していくかということを、民間と行政とがいっしょになって考えていかないといけない時代になってきたと思います。私たちは、たとえば健康プロジェクトをただやりましょうと言っているのではなく、いまメタボの人がどれくらいいて、何を実行すればどれだけの予算を圧縮できるかを全部データで示して提案しているのです。そうやって正しく考えていかないといけない時代になっています。そのなかで、民間と行政の間に入って調整しながらプロジェクトをつくる人間というのは、間違いなく必要になると思います」

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山内は「次のディスカッションでは、3人からのプレゼンテーションを受けて、さらに議論が展開されると思います」と予告し、この部を終えて次につなげました。

書き手:粥川 準二(フリーライター)

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●みちのく復興事業シンポジウムのイベントレポート
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【イベントレポvol.6】地方創生のために、企業ができることとは?-第4回みちのく復興事業シンポジウム

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