地方創生のヒントin東北
【イベントレポvol.2】「大切なのは、まず自分が幸せになる覚悟があるか」西粟倉・森の学校牧大介氏が語る、地域おこしに関わる人に大切なこと-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
2016年3月8日、「みちのく復興事業パートナーズ」とETIC.は、電通ホールにて、「みちのく復興事業シンポジウム」を開催しました。
東北の被災地では高台移転や復興住宅の建設が進む一方、まちや産業の復興はいまだ途上の段階にあります。しかし、東北ではこの5年間、さまざまな人々が集まり、さまざまな試みがなされ続けています。この復興という過程で、東北のみならず、日本の地方創生の契機が生まれつつあります。
地方創生において、企業は何ができるでしょうか? この日、東北復興に取り組む企業のコンソーシアム「みちのく復興事業パートナーズ」はゲストもまじえ、地方創生における企業の取り組みについて議論しました。
みちのく仕事では、 みちのく復興事業シンポジウムの内容の一部を6回にわたってお届けします。今回はその第2回。株式会社西粟倉・森の学校牧大介氏による、岡山県西粟倉村での地域おこしの事例紹介です。
●みちのく復興事業シンポジウムのイベントレポート
【イベントレポvol.1】「東京より田舎のほうがリスクが少ない」『里山資本主義』藻谷浩介氏が考える、その理由とは?-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.2】「大切なのは、まず自分が幸せになる覚悟があるか」森の学校牧大介氏が語る、地域おこしに関わる人に大切なこと-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.3】りぷらす代表橋本大吾氏が取り組む、”支えられる側が支える側にまわる”福祉とは?-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.4】「漁師の仕事を新3K=かっこいい、稼げる、革新的に」フィッシャーマン・ジャパンの長谷川氏が描くビジョン-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.5】「きちんと動けるチームを、セクターを越えてつくれるか」アスヘノキボウ小松氏が語る、地域おこしのポイント-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.6】地方創生のために、企業ができることとは?-第4回みちのく復興事業シンポジウム–
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牧大介氏は「地方にまだまだチャンスがあるというお話でしたが、岡山県の例を話します」とプレゼンを開始しました。牧氏が代表取締役を務める森の学校ホールディングスでは、岡山県西粟倉村で「ほったらかしの山をなんとかしよう」として、林業に取り組んでいます。
牧氏によれば、西粟倉では同社が「木材の流通でハブに」なっており、売り上げが伸びているといいます。「われわれのような小さな企業が入って行くニッチ市場はあるのです。山から出る資源をどう利用するか? 林業ですら結構な結果が出ているのです」
村の人口は1500人弱。ところが園児・児童・生徒の数を見ると、2011年度を最低として、V字型に増加しつつあります。「残念ながら出生率こそ増えていないものの」と牧氏は言いますが、子どもの数は着実に回復しているのです。
反発もあったものの、村がベンチャー企業や移住者を受け入れ、支援していることが、この傾向の背景にあることを牧氏は指摘します。
西粟倉では、村の人事部と呼ぶ「雇用対策協議会」を2007年に立ち上げました。2008年には「百年の森林構想」が旗揚げされます。そして2009年、「百年の森林事業」が開始され、林業の再生による村おこしが本格化しました。
しかし、「森と木があっても、価値は生まれてこない」と牧氏は指摘し、「やる人探し」が重要だと言います。
牧氏は、ある若い男性が西粟倉で仕事を始めたころの「使用前」の顔写真と現在の「使用後」の顔写真を並べて見せます。現在の顔のほうが貫禄あることは明らかです。「ここは楽しいよと呼んでおいて、落とし穴に落として、『がんばれよ』と言っているみたいなことですね。いまでは立派な人間になっています」。そのほかにも、日本酒が大好きな若い女性が移動式の居酒屋を始めたところ、大好評だったことなども紹介されました。
西粟倉ではベンチャー企業や移住者を支援しているのですが、西粟倉・森の学校が「地域おこし協力隊」の「挑戦者募集」をするさいには「定住しなくていいんです」と言っている、といいます。「自分の物語をこの村でしっかりと生きた。この村で精一杯の挑戦をやってみた。そのことは村にとっても、あなたにとっても、きっと重要な意味を持つはずです」という説明文を、牧氏は紹介します。
「まず自分が幸せになる覚悟があるか?」、「ミッションは自分おこし」などといった言葉とともに、若者たちががんばっているうちに地域になじみ、それぞれの人生を大切にすることが起業家の卵を育んでいく、というのが牧氏の考えであり、西粟倉の考えだといいます。
「地域おこしというのは、森が育っていくように1人ひとりの自分おこしの積み重ねでしかないので、そのための舞台を誰がどうつくっていくのか? そういった1人ひとりの自分おこしをどう支えていくか? 似た冒険心を持つ人が集まって来れば、同様な気質の人々を集めるきっかけになり、ハブになりインフラになる。自分自身がそうしたハブ機能を果たすことができれば、と思っています」
牧氏はそう話して、プレゼンを終えました。
藻谷氏の指摘した都会の危機と地方のチャンス。牧氏の紹介した地方のチャンスの実現化例。この2人の基調講演は会場に大きな余韻を残し、次のプレゼンテーションが始まりました。
書き手:粥川 準二(フリーライター)
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●みちのく復興事業シンポジウムのイベントレポート
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