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特集記事 【イベントレポvol.4】「漁師の仕事を新3K=かっこいい、稼げる、革新的に」フィッシャーマン・ジャパン長谷川琢也氏が描くビジョン-第4回みちのく復興事業シンポジウム-

地方創生のヒントin東北6067viewsshares2016.05.13

【イベントレポvol.4】「漁師の仕事を新3K=かっこいい、稼げる、革新的に」フィッシャーマン・ジャパン長谷川琢也氏が描くビジョン-第4回みちのく復興事業シンポジウム-

2016年3月8日、「みちのく復興事業パートナーズ」とETIC.は、電通ホールにて、「みちのく復興事業シンポジウム」を開催しました。

東北の被災地では高台移転や復興住宅の建設が進む一方、まちや産業の復興はいまだ途上の段階にあります。しかし、東北ではこの5年間、さまざまな人々が集まり、さまざまな試みがなされ続けています。この復興という過程で、東北のみならず、日本の地方創生の契機が生まれつつあります。

地方創生において、企業は何ができるでしょうか? この日、東北復興に取り組む企業のコンソーシアム「みちのく復興事業パートナーズ」はゲストもまじえ、地方創生における企業の取り組みについて議論しました。

みちのく仕事では、 みちのく復興事業シンポジウムの内容の一部を6回にわたってお届けします。今回はその第4回。一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンの長谷川琢也氏による、東北の水産品にブランド価値を与え新たな水産業を創造する「三陸フィッシャーマンズプロジェクト」の紹介です。

●みちのく復興事業シンポジウムのイベントレポート
【イベントレポvol.1】「東京より田舎のほうがリスクが少ない」『里山資本主義』藻谷浩介氏が考える、その理由とは?-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.2】「大切なのは、まず自分が幸せになる覚悟があるか」森の学校牧大介氏が語る、地域おこしに関わる人に大切なこと-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.3】りぷらす代表橋本大吾氏が取り組む、”支えられる側が支える側にまわる”福祉とは?-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.4】「漁師の仕事を新3K=かっこいい、稼げる、革新的に」フィッシャーマン・ジャパンの長谷川氏が描くビジョン-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.5】「きちんと動けるチームを、セクターを越えてつくれるか」アスヘノキボウ小松氏が語る、地域おこしのポイント-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.6】地方創生のために、企業ができることとは?-第4回みちのく復興事業シンポジウム

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長谷川 琢也 氏 - Fisherman Japan事務局/ヤフー株式会社復興支援室 ヤフー株式会社復興支援室に勤務。東日本大震災後に石巻に移り住み、石巻を拠点に被災地や東京をうろうろしながら東北の人たちとビジネスを立ち上げる。被災地の農作物や海産物、東北の歴史が息づく伝統工芸品などをネットで販売する「復興デパートメント」や、東北の水産品にブランド価値を与え、新たな水産業を創造する「三陸フィッシャーマンズプロジェクト」の立ち上げ等に従事。現在、これからの漁業の担い手となる漁師を増やしていくトリトンプロジェクトに奮闘中。

長谷川 琢也 氏 – Fisherman Japan事務局/ヤフー株式会社復興支援室
ヤフー株式会社復興支援室に勤務。東日本大震災後に石巻に移り住み、石巻を拠点に被災地や東京をうろうろしながら東北の人たちとビジネスを立ち上げる。被災地の農作物や海産物、東北の歴史が息づく伝統工芸品などをネットで販売する「復興デパートメント」や、東北の水産品にブランド価値を与え、新たな水産業を創造する「三陸フィッシャーマンズプロジェクト」の立ち上げ等に従事。現在、これからの漁業の担い手となる漁師を増やしていくトリトンプロジェクトに奮闘中。

一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンの長谷川琢也氏はいきなり参加者たちに「みなさんお魚好きですか?」と問いかけ、日本人が好きな食べ物のランキングでは、いまだに鮨が上位にあることを確認します。

「しかし、日本の漁師は減り続けているのです。20年で半数になっています。海産物の自給率も下がっています。好きだと言っているのに、魚食は減っているのです」

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長谷川氏によれば、震災後の復興についていえば、たとえばカキの養殖はまだ半分。「漁師である親も子どもに『勉強して役場職員にでもなれ』と言っている状態です」。長谷川氏は、東北の復興をまず漁業から、漁師から盛り上げて行こうということで設立したフィッシャーマン・ジャパンのプロモーション映像を紹介しました。映像では、ロック調のBGMとともに、若い漁師たちが船上や港で活躍する姿がまるでポピュラー音楽のプロモーションビデオのように紹介されました。

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「漁師の仕事は3K(キツい、汚い、危険)と言われてきましたが、これを新3K、つまり『かっこいい』、『稼げる』、『革新的』に変えていこうというビジョンで活動しています。2024年までに、三陸で、多様な能力をもつ新しい職種『フィッシャーマン』を1000人増やすつもりです」

具体的には、漁そのものだけでなく、「漁師だからこそできる加工品を」と商品開発や販売にも取り組んでいます。長谷川氏もまた「力を入れているのは担い手の育成です」と話します。そのため勉強会やイベントも精力的に行い、仲間やネットワークを増やしているといいます。また、たとえば女川では空き家をシェアハウスにして、フィッシャーマンの住居にするという試みなども実践しています。長谷川氏はあるメンバーの言葉を紹介します。「仲間がどんどん出て行ってしまう。自分たちが盛り上げたら、いつか彼らも帰ってくるかもしれない」。幸いにも最近は地元の水産高校から、卒業生を受け入れてくれ、との声もあり、長谷川氏は「挑戦は始まったばかりです」とは言うものの、成果は着実に出ているようです。

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話を受けて山内が「自治体や漁協、学校も巻き込んでいるとのことですが、地元の反応は?」と尋ねると、長谷川氏は「最初は反発も大きくて、いろんなプロジェクトがつぶされかけましたが、結果を出したので態度が変わり、いっしょにやるようになりました。担い手に関しては、そういうことだったら手伝うよ、とも言ってもらっており、協力体制が大きくなっています」と答えました。

山内が「民間の漁業団体というのは全国的にも珍しいのでは?」と尋ねると、長谷川氏は「漁業ではあまりないみたいで、それもあっていろいろと問い合わせなどをいだだいています」と答えました。山内が「ハブ的な役割を担い、看板を掲げて実績を出したら、まわりがいろいろと動いてくれて、たぶん自分たちが想像している以上の動きになっているんじゃないかと思います」と感想を述べ、そのうえで「いま抱えている課題は?」と聞くと、長谷川氏はこう言いました。

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「『困ってなさそうじゃん』と言われることもあるのですが、困っていて(会場笑)、漁師は去年でいうと、まだ5人ぐらいしか増えていないのですよ。売り上げとかも含めてまだまだなので、いまはまずわれわれのことを知ってもらって、もし魚が好きなら、何かお力を貸していただけたらと思っています」

書き手:粥川 準二(フリーライター)

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●みちのく復興事業シンポジウムのイベントレポート
【イベントレポvol.1】「東京より田舎のほうがリスクが少ない」『里山資本主義』藻谷浩介氏が考える、その理由とは?-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.2】「大切なのは、まず自分が幸せになる覚悟があるか」森の学校牧大介氏が語る、地域おこしに関わる人に大切なこと-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
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