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特集記事 【イベントレポvol.1】「東京より田舎のほうがリスクが少ない」『里山資本主義』藻谷浩介氏が考える、その理由とは?-第4回みちのく復興事業シンポジウム-

地方創生のヒントin東北2163viewsshares2016.05.09

【イベントレポvol.1】「東京より田舎のほうがリスクが少ない」『里山資本主義』藻谷浩介氏が考える、その理由とは?-第4回みちのく復興事業シンポジウム-

2016年3月8日、「みちのく復興事業パートナーズ」とETIC.は、電通ホールにて、「みちのく復興事業シンポジウム」を開催しました。

東北の被災地では高台移転や復興住宅の建設が進む一方、まちや産業の復興はいまだ途上の段階にあります。しかし、東北ではこの5年間、さまざまな人々が集まり、さまざまな試みがなされ続けています。この復興という過程で、東北のみならず、日本の地方創生の契機が生まれつつあります。

地方創生において、企業は何ができるでしょうか? この日、東北復興に取り組む企業のコンソーシアム「みちのく復興事業パートナーズ」はゲストもまじえ、地方創生における企業の取り組みについて議論しました。

みちのく仕事では、 みちのく復興事業シンポジウムの内容の一部を6回にわたってお届けします。今回はその第1回。株式会社日本総合研究所の主席研究員・藻谷浩介氏による、「復興と地方創生における企業の役割」についての問題提起です。

●みちのく復興事業シンポジウムのイベントレポート
【イベントレポvol.1】「東京より田舎のほうがリスクが少ない」『里山資本主義』藻谷浩介氏が考える、その理由とは?-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.2】「大切なのは、まず自分が幸せになる覚悟があるか」森の学校牧大介氏が語る、地域おこしに関わる人に大切なこと-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.3】りぷらす代表橋本大吾氏が取り組む、”支えられる側が支える側にまわる”福祉とは?-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.4】「漁師の仕事を新3K=かっこいい、稼げる、革新的に」フィッシャーマン・ジャパンの長谷川氏が描くビジョン-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.5】「きちんと動けるチームを、セクターを越えてつくれるか」アスヘノキボウ小松氏が語る、地域おこしのポイント-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.6】地方創生のために、企業ができることとは?-第4回みちのく復興事業シンポジウム

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藻谷 浩介 氏 – 株式会社日本総合研究所 主席研究員 平成合併前の3,200市町村のすべて、海外74ヶ国をほぼ私費で訪問し、地域特性を多面的に把握。2000年頃より、地域振興や人口成熟問題に関し精力的に研究・著作・講演を行う。2012年より現職。近著に「デフレの正体」、第七回新書大賞を受賞した「里山資本主義」(共に角川Oneテーマ21)、「金融緩和の罠」(集英社新書)、「しなやかな日本列島のつくりかた」(新潮社、7名の方との対談集)。

藻谷 浩介 氏 – 株式会社日本総合研究所 主席研究員
平成合併前の3,200市町村のすべて、海外74ヶ国をほぼ私費で訪問し、地域特性を多面的に把握。2000年頃より、地域振興や人口成熟問題に関し精力的に研究・著作・講演を行う。2012年より現職。近著に「デフレの正体」、第七回新書大賞を受賞した「里山資本主義」(共に角川Oneテーマ21)、「金融緩和の罠」(集英社新書)、「しなやかな日本列島のつくりかた」(新潮社、7名の方との対談集)。

「被災地? 東京だって同じです」

シンポジウムは、基調講演とプレゼンテーション、ディスカッションという3部構成で進みました。主催者からのあいさつの後、基調講演「東北から生まれる地域の未来とは?」が始まり、株式会社日本総合研究所の主席研究員・藻谷浩介氏と、株式会社森の学校ホールディングス代表取締役の牧大介氏がそれぞれの立場から、復興と地方創生における企業の役割について問題提起しました。

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先頭を切った藻谷氏は「みなさんが知らないといけない日本の現実を話します」と宣言するように話し始めました。そしてまず、阪神大震災とは違って東日本大震災では建物が壊れたことによって生じた被害はきわめて少なかったこと、津波に対しても耐震改修をした建物は流されなかったことを指摘します。「しっかりと考えて備えをしていれば、近代技術である程度勝てるということです。少なくとも建物は、地震と津波には勝てるということがわかったのです」

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そのうえで、日本では住宅8軒のうち1軒が空き家であることを藻谷氏は示します。「知らない人ばっかりなのですよ」。空き家の率が最も高いのは山梨県で22%。次いで長野県の20%。「東京の人が別荘をつくって放置しているからです」。その一方で、最も低いのは宮城県で9.1%。これは「津波で流れてしまったから」だと藻谷氏は説明します。「津波で奇跡的に助かったけど、家は流されてしまった人たちが空き家を借りに行きますから、空き家が減るわけですね」

藻谷氏は参加者たちに「日本で空き家がいちばん多い都道府県はどこでしょう?」とクイズを出しました。「東京に決まっていますよ。82万軒も空き家があるんですから」。次いで大阪、神奈川、愛知、北海道、千葉、兵庫、埼玉、福岡。「大都市ばかりですよ」と藻谷氏は強い調子で述べます。

消費は減っているのに、なぜか家だけが売れていて、新築マンションの値段が史上最高になっている。その影では、史上最高の数の空き家が発生している。そうした現状を知らないままマンションを買っている人に話を聞いてみると、「被災地? あんなのほっときなさいよ。東京だけ元気ならいいんだよ」と話す人もいるそうです。しかし藻谷氏は「これ、“元気”と言えるんですか?」と疑問を呈します。

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“東京が元気で、田舎は死んでいます神話”というものが、ありとあらゆる数字の証拠に反していわれ続けていて、「大企業はそれで食いつないでいる」と藻谷氏は批判的に言います。その一方、北海道などのデータを見ると、司法書士1人あたりの人口は、地方よりも都会のほうが少なく、そのことに気づいた司法書士のなかには都会から地方に拠点を移す者もいる、とのこと。「これ、被災地で起きていることと同じだぜ! 女川で一生懸命、石けんをつくっている人と同じだ! 彼らは奥地に引っ込んでいるんではなくて、中心に向かっているのであり、その地域を支えているのです」

藻谷氏は具体的なデータを挙げながら、東京こそが危機にあることを指摘します。東京の人口は増え続けているのですが、65歳以上の高齢者だけが増えており、15歳から64歳までの「生産年齢人口」はむしろ減っています。「この事態はみなさんが“田舎”と思っている県で、いまから20年前に起きたことですよ。20年遅れて東京でも起きているのです。東京の成長はもう終わりました」

“クルマのまち”として知られる愛知県豊田市でも同様で、これまで人口が増え続けてきたが、団塊の世代が続々と退職し、65歳以上の高齢者だけが激増しています。豊田も東京と同じく、医療・介護の体制が整っていない、と藻谷氏は指摘し、『地方消滅』(中公新書)で有名になった増田寛也氏の『東京消滅』(中公新書)、とくにその巻末を参照することを参加者たちにすすめます。

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東北では震災以前から人口が減り続けています。「被災地? 東京だって同じです。外国人がいなくなかったら、やばいですよ」。東京では、遠からず75歳以上の人口が激増し、「福祉そのほかが絶対にもたなくなる」と藻谷氏は警告します。一方で、地方にこそチャンスがあることを藻谷氏は主張します。「むしろ高齢者がほとんど増えない田舎のほうがリスクが少ない」

「大きなチャレンジをしている若い人の話をぜひ聞いていただきたい。彼らは直感的にこの事態がわかっていて、衰退する地域から再生の芽をつくることが日本だけでなく世界を救うことを知っているのです」

最後に藻谷氏は、島根県邑南町を例に挙げます。邑南町も高齢化が進んでいます。しかしこのまちは「全然崩壊していない」と言います。「ホームレスは1人もいないし、食べ物はおいしいし、そしてなんと、出生率が2.65もあります」。邑南町では24時間小児科救急などが充実しており、「引っ越して入って来る若い人のほうが、出て行く人よりも多い」とのこと。

「確実に新しい動きが出てきている。彼らは逃げているのではなくて、中心へと、世の中の本筋へと走っているのです」と、藻谷氏は地方にこそ希望があることを再確認して話を締めくくりました。

書き手:粥川 準二(フリーライター)

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●みちのく復興事業シンポジウムのイベントレポート
【イベントレポvol.1】「東京より田舎のほうがリスクが少ない」『里山資本主義』藻谷浩介氏が考える、その理由とは?-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
【イベントレポvol.2】「大切なのは、まず自分が幸せになる覚悟があるか」森の学校牧大介氏が語る、地域おこしに関わる人に大切なこと-第4回みちのく復興事業シンポジウム-
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