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特集記事 東北の社会課題を、本業のICTと繋げて(1)

リーダーがビジョンを語る2269viewsshares2013.04.01

東北の社会課題を、本業のICTと繋げて(1)

何か社会的な活動をしたいと思った時に、どうやって本業を生かすか。またどうしたら本業に生かせるのか。社会貢献に関心のあるワーキングパーソンなら誰でも考えたことがあるだろう。NPO法人ETIC.の「右腕派遣プログラム」の派遣先プロジェクトの1つでもある「石巻医療圏 健康・生活復興協議会」で、東北の現場の住民の実地調査に取り組んできた生川慎二さんの本業は、富士通のシステムエンジニア、コンサルタント。どうして被災地での活動に携わるようになり、それがどう本業と関連しているのかを聞いた。【石巻医療圏 健康・生活復興協議会・リーダー・生川慎二(1)】

■震災前からのネットワークを活かして■

―まず、石巻医療圏 健康・生活復興協議会の活動について教えてください。

2011年10月から宮城県石巻市および女川町の在宅被災世帯(壊れた自宅に戻って生活を続けている方たち)約12000世帯・3万人を対象に、訪問調査型による健康・生活アセスメントを実施し、住民支援専門員による健康面・生活面のフォローを行っています。医療・健康ユニットとコミュ二ティ・生活ユニットの2つからなっており、前者では収集した情報をデータベース化し、住民支援専門員が内容に応じて健康面のフォローを行っていますね。コミュニティ・生活ユニットでは、医療・健康ユニットや他団体、行政・企業と連携し、コミュニティの再生支援や自立した生活を取り戻すための情報支援などを行っています。地域のつながり再生を行いながら、住み慣れた地域で自分らしく生きることのサポートをしています。

―生川さんは、震災の起こる前から「一般社団法人 高齢先進国モデル構想会議」という団体で活動されていたそうですね。

高齢先進国モデル構想会議は、来るべき超高齢社会を見据えて、「高齢者を包括的に支えるサービスプラットフォームの創造」を目指し、医師であり社会イノベーターでもある武藤真祐氏が呼び掛けて結集したコンソーシアムです。高齢者が安心して暮らすことができ、一人ひとりと社会がつながるプラットフォームをどうしたら構築できるか。医療・介護、行政、企業がそれぞれの得意技や知恵を持ち寄って実践の中から解決策に挑戦することに取り組んでいます。

―勤務先である富士通はどんな関わり方をしていたのですか。また、生川さんの本業との関係は。

富士通は、高齢社会の社会課題解決方法の一つとして、高齢先進国モデル構想会議のビジョンに共感・賛同し、活動に参画しています。高齢社会問題のように、1企業や1個人の枠に収まらない社会課題に対しては、民の力の総力戦となるため、そこに富士通の持つ得意技で貢献したいと考えました。私は、会社の了解を得て、高齢先進国モデル構想会議の一員として参加しています。

―震災が起きたときは、どうされたのですか。

震災発生後すぐに、「被災地は、情報が混乱することが確実である。富士通のクラウドで貢献できることが必ずあるはず」と考え、仲間と企画書を書き、役員に提案をしました。3月15日には、社長・副社長・役員の即決で、経営会議直轄の「災害支援特別チーム」が組織横断で結成され、現場のリーダーとして被災地支援活動に取り組みました。

―具体的にはどういうことをされたのでしょう。

被災自治体や関連機関、復興支援を行うNPOなどに対し、現場にシステムエンジニアを派遣し、富士通の持つクラウドを無償提供して情報の整理を支援する現地活動を行いました。その一つの連携先が、「被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト(通称:つなプロ)」です。つなプロは、阪神・淡路大震災で、避難所における二次災害の悲劇を経験したNPOのリーダーたちが結成した団体で、二度と避難所における悲劇を繰り返さぬよう、社会的弱者の特別なニーズを把握し、専門支援につなげることを目的にした「場」づくりをしていました。日本財団さんに声をかけていただき、私もつなプロに加わりました。何百とある避難所を1ケ所づつ訪問し、ボランティアが情報を集めて、分析して専門支援につなげる活動ですから、同時多発的に大量の情報が発生し、情報鮮度が旬なうちに利活用をしなければいけません。「クラウドならすぐできます。こうやってやりましょう」と現地に一緒に乗り込み、情報管理ステムを4日後から提供しました。

―関わってみて感じたことは。

避難所の実態を示す生の情報を見て愕然としました。高齢化率が50%を超える数多くの避難所、社会的弱者が取り残され孤立する実態。そして、多くの医療機関が甚大なダメージを受け、医療提供体制が欠乏している状態。避難生活が長引けば、持病の悪化や身体・認知能力の低下も懸念されます。こうした支援の需要と供給のギャップは、まさに将来の日本の高齢社会問題の縮図であると感じました。実際に自分でも避難所を回り、現実を目の当りにし、同じ日本人として行動をしなくてはいけないという衝動に駆られました。また、NPOの突破力と社会課題に挑戦する情熱を体感できたこともその後のソーシャルイノベーション活動に挑戦する上で影響を受けました。

■行政の網の隙間からもれてしまう人たちの実態を知り、調査■

―それで、避難所から出られた被災者の調査に入っていくわけですね。

被災した住民は、避難所という集団生活の中では、一定のコミュニティに加わり支えられていました。しかし、避難所が閉鎖され、抽選でバラバラに入居してしまう仮設住宅では高齢者は孤立の恐れがある。そうなると浮上してくるのは、身体上の疾病に加えて孤独死の問題です。「高齢化率の増加に対し、それを支える人の割合が減っていく。これは、将来の日本の姿ではないか。」高齢先進国モデル構想会議は動きました。医師でもある代表の武藤は、地域医療が崩壊してしまった石巻に在宅医療診療所「祐ホームクリニック石巻」を開設し、自ら院長となることを決断し、地域の被災者の実態を調査して包括的に支援をする取り組みを始めたのです。なぜならば、仮設住宅に馴染めない高齢者の多くは、全壊・大規模半壊でも住み慣れた自宅に戻って壊れた自宅の二階で生活をするという在宅被災世帯の存在が見えてきたからです。

―なぜ、仮設住宅に入らないという状況が起きたのでしょうか。

もともと土地の少ない沿岸部が津波被害を受け、仮設住宅を建設できる場所は、住宅地から離れた空き地に建設されました。多くのケースでは、買い物や通院に不便であり、ただでさえ車両流出等により移動手段を失った高齢者にとっては孤立を招く状況でした。その上、抽選で入居した仮設住宅には知り合いや友人が少なく、コミュニティの輪に加わることが困難な状態でした。それで、多少不便な生活でも住み慣れた壊れた自宅に戻ろうという被災者が多く出現しました。

―彼らは、行政の調査や支援の網からもれてしまうのですね。

石巻市内には仮設住宅が約7000戸、民間賃貸仮設が6500戸。それに対して在宅被災世帯は8000~12000世帯程ございました。当初、全壊・大規模半壊の被害を受けた被災者は仮設住宅に移住するということでしたので、行政側では在宅被災者は「存在していない」という認識で対応が遅れていました。行政側にも事情があります。もともと、行政の健康対策部門の保健師などの人数は限られています。そこに震災により通常の50倍、100倍の要フォロー者が瞬時に発生しました。全国から応援をいただいても、行政の保健師がカバーできる範囲は仮設住宅だけでも手一杯でした。「壊れた自宅に被災者が戻ってきているらしい」ということは、うすうす感じていても、調査にいける余裕はなく、行政内に“在宅被災世帯”という定義もないため、対応が後手にまわりました。

―それで石巻医療圏の活動となるわけですね。調査では、どう役割分担をしていたのですか。

私は、高齢先進国モデル構想会議、富士通災害支援特別チームの一員として協議会の立ち上げ期から参加をしました。石巻医療圏 健康・生活復興協議会の活動は、大きく1期(2011年10月~2012年3月)と2期(2012年4月~2013年3月)に分かれます。1期の立ち上げ期に事務局人材確保、情報管理の仕組みの整備、活動協賛金集め、ボランティア集めなどに関与しました。医療健康フォロー面は、祐ホームクリニック石巻が担当し、私は生活支援・コミュニティ支援・情報管とうほくを担当しました。健康・生活アセスメントは、地の利とネットワークがあるので、地元のボランティア支援団体と連携しました。2期からは、在宅被災世帯支援の活動が地域でも認められて行政との連携も進みました。官が補えない隙間を民が支えるという取り組みに繋がっています。

続き:東北の社会課題を、本業のICTと繋げて(2)

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