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特集記事 アートから生まれる商店街のつながり

リーダーがビジョンを語る1438viewsshares2013.01.29

アートから生まれる商店街のつながり

これまで美術家として多くの商店街の活性化に携わってきた安部泰輔さん。前編の立石沙織さんのお話を受けて、アートセンターの狙いからこれからの石巻の商店街の可能性まで広くお話をお聞きしました。【日和アートセンター・立石沙織・安部泰輔(2)】

-安部さんはなぜ石巻に来ることになったのですか。

安部さん)僕自身は九州の人間で、呼ばれたらあっちこっち行くけど、横浜はけっこうゆかりが深いというかね。2005年に「横浜トリエンナーレ」という国際展に出たことをきっかけに、黄金町エリアの「黄金町バザール」にも、NPOが発足するかしないかの時期から関わってきたんですね。黄金町も、2005年ぐらいの頃は街の空洞化が課題になっていて。アートイベントを多数企画してきた山野真悟さんがディレクターになって「アートによるまちの活性化」を考えていくことになったんです。最初はアートうんぬんじゃなくて、アートがエッセンスとして入る程度だったと思う。人が常にいて何かをつくっていることでまちがどう変わるかというような実験的な場所だったんだけど。

-そんな時期だったんですね。

安部さん)うん。それで2005年から、一年に一回くらいは黄金町エリアに滞在制作をしに行っている。今回のこの『ヒヨリノモリ』という展覧会も、「黄金町バザール」のディレクターであり、「日和アートセンター」の実行委員長でもある山野真悟さんから誘いを受けたことがきっかけですね。

-そうだったんですね。

安部さん)以前ここは楽器店だったのかな。で、上の階が音楽教室。
一回閉めちゃった店舗に再び電気がつくだけで、もう単純に地元の人は興味あるわけです。ここまた楽器店始めたの?みたいな感じで来るときもあるし、作品として服を吊ってるから「服屋になったの?」と言われることもある。まずはそういう入り方で入ってもらって「実はこうなんですよ」みたいに何回も咀嚼して人に伝えていく。そうすることでお互いに構築していくものがあるわけだから。何回もそういうのをやっていくことが、まあ面白いというか。

-面白い。

安部さん)伝えにくいところでどうやってちゃんと伝えるかというのが一つあって。人だからね、相手のことはまあわからないから、どこまで伝えられるのかというのもわからないんだけど、でもせっかくだからと努力するじゃないですか。それがアートに込められたものとしてあるかな。

-それは面白いですね、なるほど。

安部さん)僕はね、基本的に人と人とはわかりあえないと思っているのね。でも無理だからこそお互い存在価値がちゃんとあるというか。要するに努力するわけじゃないですか。わかろうとして、でも最終的にはわからないことが多いんだけど、でも努力することに人間らしさというのが一つあるから。

-どうやっても相手が考えていることすべてはわかりませんよね。でも、わかりあおうとすることが、僕も大切な気がします。

安部さん)うん。動物みたいにただ好きか嫌いかだけじゃ決まらないからね。こういう商店街というのは特にそういうことで出来ているからね。だからお互いのわからないことをどれだけ努力してわかろうとするか。じゃないとどこかで片づけられてしまってそのまま時間が過ぎていく。だからこういうことは、「わからない」ということをキーワードに、お互いがどう立ち位置を決めていくのか、というところが面白いんです。

-ああ、なるほど。だからこそ、安部さんは単に作品をつくって展示するだけでなく、来て頂いた方に絵を描いてもらって、それを形にすることを通して、お互いにわかりあおうとする時間をつくっているのですね。

安部さん)それが結構自分の中で重要なんですね。ただ、自分で作品をつくって、できたものを相手に渡すだけならそれで終わっちゃうんですよ。要するに2時間くらい楽しいことをやっても、楽しいねで終わっちゃう。だけどみなさんが描いた絵と僕がつくった作品を展覧会というかたちで提示することで、自分の描いた絵の作品もよく見るし、あと他の人の作品もよく見る。

-なるほど。そういうことが起きるだろうと、想像しているんですね。

安部さん)うん。はじめは自分のこどもの絵がうれしいから見るとか、自分の絵がうれしいから見るとかだけなんだけど、こういう風に展示して何回でもこの場所に足を運ぶことで、見えてくるものがあるんじゃないかな。もしかしたら見るということは話すということよりも何かが見えたりつながったりすることがあるかもしれない。

楽しいだけだといわゆる日常の中で単なる潤滑油みたいな感じになっちゃうわけなんだけど、そこで誰かが意識することでたいぶ違ってくる。それをどう意識し合えるか、見るということの作用をどうしていくかが重要で。だからこういうことやってるんだよね。

-うーん。面白いですね。

安部さん)そうそう。まあいろんな形で関わる人がいるからそれはそれでいいんだけど、でもそれだけで終わったらなんかね、ただの観光で終わっちゃうというか。

-確かに。人と人との関わりを考えたときに、いろんな可能性がありますね。

安部さん)あると思う。ちょっといろいろ考えたりすることとか必要で。だからまあこういう風に服的なものをかけてなるべく入りやすくするというのが一つある。さらに展示されている服が作品の素材になる。こういうのが見えればアートがなんかわからんけど説得力はあるんだよね。僕ここでなんかやってますよと。

-そうですね。

安部さん)商店街で滞在しながら公開制作するということをよくやってるんだけど、これって意外と昔の商店街の風景だと思う。商店街が昔なぜ機能していたかといったら、商店街の中だけでちゃんと機能していたということだと思う。要するに靴屋はここで靴をつくって、それで自分の商品を売っていた。魚屋なら客と話をしながらその場で魚をおろしたりして。さらには魚屋さんが靴が壊れたら靴屋にいって、靴屋の人が魚を買いに魚屋いくとかね。

-なるほど。

安部さん)要するに「昔の建築」なんですね。社会性がずっと残っていたわけだから。今はみな同じところで商品を仕入れているから、どこも同じになって顔が見えなくなる。だから今あっちこっちの商店街に行ったら何が一番困るかといったらそういうこと。ガレージが閉まっちゃって見えないところはどんどん見えなくなっているからもうどうしていいかわかんない。

-横のつながりが必要ですよね。

安部さん)そうそう。それが実現できるといいんだけど、でも今どこもそういうことになってないから。でも、ここはね、今回の震災があったというのが一つあって。それはすごく深刻なことなんだけど、これからここの商店街というか、土地がどうなるかというのがある意味面白いなと。

-新しいことが起きるような可能性がある。

安部さん)ある。たくさんの人が入り込んでいるし。だからもしかしたら未来には、ここがモデルケースとして機能を果たすかもしれない。それで国から大きな予算がつくということもあると思う。それはどうしてかというと、ここで構築したものを次に転換するというシステムがあるから。だからあと2,3年は大事。

-そうですよね。そのままだったら、ゆるやかに断絶してつながりが失われていたかもしれないけれども、ここは人が人を呼んで、新しいつながりがたくさんできているように思います。

安部さん)この2,3年あたりはいろいろあると思うよ。一つの地域に集まるものが普通じゃないと思うからね。もちろん、それによっていろいろ振り回されることもあるし。それをうまく取り込むこともあるから。だからこそ意識的な目が必要だと思う。

-意識的な目。そういう目があれば、あまり変なほうに向かっていかないかもしれない。

安部さん)でもまあ、僕みたいなことを言ってる人ばかりが集まってもろくなことないからね。いやほんとにそのバランスが今出来つつあるから。そのバランスをうまくどう保つか。

-これを読んでいる人には何ができるでしょうか。

安部さん)来てほしいという一言に尽きるというか、この箱の見え方はアーティストによって変わるわけだから、単純に何回でも来てそれを体感してほしいというのはある。で、地元の人も外からも来てほしいですね。

立石さん)そうですね、今はまず横浜でつながりのある作家さんに来てもらっているんですけども、今後は石巻のアーティストの人達にも関わってもらって、そういう人たちの活動の場としてもやっていきたいと思っています。そのときに来る人もやっぱり石巻の人が主役であってほしいんですけども、そこに偶然居合わせた人も主役になれるような場所にしていきたいなと思っていますので。はい。是非来てほしいです。

安部さん)まあ、遊びに来てくださいということで。

-まず、遊びに行く、というところからですね。今後の活動を楽しみにしています。ありがとうございました。

前編はこちら:街の一部になって、一緒に楽しむ

聞き手:中村健太(みちのく仕事編集長)/文:坂口雄人(ボランティアライター)

■日和アートセンターHP: http://hiyoriartcenter.com/


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