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特集記事 「主役は住民」女川町の復興の黒子役

リーダーがビジョンを語る5511viewsshares2012.10.26

「主役は住民」女川町の復興の黒子役

震災による住居倒壊率が東北で最も高く、甚大な被害を受けた町である女川町。ここ女川町で、今年の1月から女川復興連絡協議会戦略室に参画している、リクルート出身の小松洋介さん。前回のインタビューで、女川に関わるまでの経緯を話してくださった小松さんに、具体的なお仕事や今後についてお伺いしました。【女川復興連絡協議会・リーダー・小松洋介(2)】

-小松さんが戦略室長の黄川田さんと一緒にお仕事をしながら、大事になさっていたことは、どんなことですか。

一番は、自分は主役じゃない、ってことです。あくまで黒子役。僕が最初の2,3ヶ月間、被災地を回っていた時に持っていた名刺には、「宮城県沿岸部 地域活性化の黒子」って書いたんですよ。「沿岸部の皆さん!主人公はアナタです!!」ってのも書いて。これであちこちに飛び込んだのは、今考えると馬鹿だなって思うんですけど(笑)。この名刺は、妻につくってもらいました。

この名刺で、あちこちの役所に飛び込んだら、なんだ、お前?とあやしがられることが多かったですが、逆に、これをおもしろがってくれる人もいました。その時から一貫して僕が思っているのは、“主役は現地の人である”ということです。僕はあくまでも黒子役なので、こちらから押し付けの提案は一切しない、ということを大事にしていました。

僕は、どっちかっていうと相手がやりたいこと、考えていることをヒアリングして、引き出すタイプです。引き出して、あるいはほっといても勝手に話す人はひたすら聞いて、それをどう実現するか、どう形にするのかを考えるのが僕の仕事かなと思っています。聞いたことを整理して、具体的にどうしましょうか、という相談を一緒にしていく。僕でなくて、相手がやりたい・考えたいことを実現するっていう立ち位置に気をつけましたし、今でも一番気をつけているところですね。

-この名刺は、最高ですね(笑)。そういう立ち位置は、以前からしっくりくるんですか。

しっくりきますね。僕、前職で営業だったんですけど、辞める前の3年間はずっと、個人成績トップだったんです。チーム全体の売上も、けっこう上位で。でも、自分がごりごり前に出て営業するというスタイルよりは、さっき話したように顧客がやりたいということをどれだけ引き出し、それに添ってこちらが持っている事例を出して広告として結果出すかだと思っていて。その時とスタンスは変わらないですね。特に女川の人たちは、こちらが前に出たら逆に引いちゃいますし。思いのある彼らがやりたいことを叶えるのが、一番いいと思うんですね。そこは、すごい感じますね。

-今、小松さんがなさっている具体的な仕事を教えてください。

たとえば、最初に企画書を持って回っていたトレーラーハウスの宿泊施設のプロジェクトは、女川で実現する方向で現在進んでいます。その中で、地元で担い手になる予定の事業者さんたちを集めて、商工会を交えてどんな事業形態で実施していくか戦略を練っていくコーディネートをしたり、必要な資金調達のための計画書や財務諸表をまとめたりしています。また、事業への補助や認可を得るために国や県に掛けあったり、事業主体となる法人を新規で立ち上げるための諸手続きをしたり、という仕事です。

やりたい意欲はあるけれど、どうしたらいいかわからないという町の人たちを対象に、こういうやり方だったらできるのでは?、と話し合いながら、戦略の立案や資金調達の課題を一つ一つ一緒にクリアしていきます。たとえば、二重ローンの問題で新しい融資を受けられない人と一緒に東日本再生機構に行って申請したり質問に答えたり。立ち上げに必要なことは、とにかくなんでもやる、という気持ちでやっています。僕だけじゃ知識が足りないこと、たとえば銀行との折衝はこういう書類を提出したらいい、などは黄川田さんに聞きながら、いろんなケースの経験をしているところです。

-現在募集している右腕も一緒にそうしたことを担っていくのでしょうか。

はい、おおまかにはそうです。右腕に持っていただきたい共通の思想としてはりーダーシップでなくて、“フォロワーシップ”です。それは、僕も黄川田も大事にしています。まず、その点を共感できるかどうか、が1つです。右腕に最初にお願いしたい仕事は、僕や黄川田さんのアシスタントです。一緒に同行して現場を見て、まずは学んでもらう。ある程度の流れやノウハウが身についた段階で、いくつかの事業の担当を任せたいです。学生でもいいというか、むしろ学生のほうがいいなと思っています。実務経験がない分、まっさらな気持ちで参画していただけるだろうし、思いと体力のある方と(笑)、まずは一緒に活動できたらいいなと思っています。

あとは、人と関わることが好きな人がいいですね。今の僕らって、毎日のようにいろんな人と会って打ち合わせするのが、仕事なんですよ。日々、新しい団体の人も口コミで聞いたので話を聞いてもらえませんか、と問い合わせが届く。ありがたいことです。なので、人と触れ合う、人とコミュニケーション取ることが好きな人がいいな、と思っています。

ぜったい、おもしろいと思いますよ。僕は、学生の時にずっとスポーツをやってたんですけど、学生時代に何か1つ強い“柱”みたいな経験があると、社会人になったときに違うと思うんですよね。女川町でそうした経験をしてもらうことによって、卒業後に社会に出た時にその人の資産に必ずなると思いますし、僕もまだ30歳ですが、できれば僕よりも若い人にチャンスを任せたいです。

-これからのご自身の展望は、どんな風に考えていますか。

5年間は、女川を中心に活動を続けます。僕らは、立ち上げることがゴールじゃなくて、立ち上げた後の事業がちゃんとうまくいくような支援をやっていこうと思っています。町が復興してくると、もっとトライしたい人が増えるはずなんですよね。これからも民間発で町に提出した復興計画に整合性のある事業を黒子役に徹しながら創り続けます。

それ以降は、女川町でも活動しつつ、被災地でない他の町でもこういった活動を始めたいと思っています。日本中のあちこちの町で、住民主体の事業を支える仕組みは必要とされている、あるいはいずれ必要になると思うんですよね。日本中の事例を集めて共通の事項をフレーム化して蓄積し、その町特有の事例とかけあわせれば、日本だけでなく世界に発信できるビジネスになりうるのでは、と可能性を感じています。そのためにも、まずはこうしたことが仕事として続けていけるように、今この女川で結果を出さねばという危機感を毎日持って、必死でやっています。

-そのヒリヒリする感じは、お話を聞いているとなんとなく伝わってきます。

今は、正直言って儲からないです(笑)。でも、他にはない大きな経験は積めるという実感がある。とにかくここでの仕事は密度が濃くて、難易度が高い。何よりも、自分でどんどん新しい仕事つくっていけることが、おもしろいです。

たとえばね、昨日急遽、住民主体のまちづくりワーキンググループのメンバーに呼ばれたんですよ。翌日、グループの成果発表があるが、グループの中で話がまとまらないので、ファシリテーションのサポートをしてほしいと。ほとんどが初めましての方ばかりの中、皆さんはどんな課題感があって、どんな打ち手をして、どんな町をつくりたいのか1つずつ聞きながら、ホワイトボードにまとめてみたところ、すごいすっきりしたと言っていただきました。その場の熱量に僕も心震えて、思わず、これスライドで発表できたらいいですよね、僕つくりますよ、と言ってしまって。スライド自体は、さくっとできたんですよ。でも、見直していたら、もっとこだわりたいと思っちゃって。作り込みに熱中していたら、午前3時でした(笑)。思いが強くある人たちに触れると、僕もやるしかないな、やるかーってやっちゃうんですよね。これは、やんないとだめだろうと。最高に、おもしろいですよ。

-ほんとうに、おもしろそうですね。どうもありがとうございました。

聞き手・文:辰巳真理子(ETIC.スタッフ)

■インタビュー前編はこちら:東北で想いを形にする姿を、子どもに見せる

■右腕募集要項はこちら:女川町復興連絡協議会

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