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特集記事 ウェブよろず相談屋さんとして、気仙沼の情報発信をサポート

私にとっての右腕体験1701viewsshares2012.10.01

ウェブよろず相談屋さんとして、気仙沼の情報発信をサポート

気仙沼に根差した企業の可能性を引き出し、日本ひいては世界に発信していく「ともづなプロジェクト」。ウェブのよろず相談屋として、6事業者で構成される「気仙沼6人衆」の情報発信や販促をサポートしてきた右腕の藤野里美さんに、現地での仕事や、プロジェクトのリーダーである斉吉商店専務の和枝さんらとのエピソードを伺いました。【ともづなプロジェクト・右腕・藤野里美】

―あらためて、どういう動機で気仙沼に来ようと思ったんですか。

まずは、自分の実家が被災地だったっていうことが大きいですね。実家や家族は大丈夫だったんですけど、「関わらないといけないな、何かしたい、しなきゃ」っていう気持ちはありました。それに、ずっと以前から起業したいとは思っていたので。ただ、会社をすぐ辞めるわけにはいかないし、シビアなことを言うと、善意だけで会社を辞めて現地に飛び込んでも、その後の仕事を誰かが面倒みてくれるわけでもないですから、震災直後は東京で会社員を続けながらできることをしていました。そんなとき、2011年の10月にたまたま「みちのく仕事」のマッチングフェアがあることを知りました。でもその時は、気仙沼に来ることは全然考えていなくて、活動拠点が東京の、別のプロジェクトにエントリーしようと思っていました。

―それがどうして気仙沼へ?

マッチングフェアに行ったら斉吉商店の和枝さんが来ていて、そのキャラクターが魅力的でした。「(この会場の)最寄り駅が”虎の門”なんて、東京はおっかない!」とか言って、会場にどっと笑いが。それで興味を持って、色々個別に話を聞いていく中で「この人と仕事がしたいな」って。和枝さんとの出会いが大きいです。

―なるほど。今はどんな生活をしているか聞かせて下さい。

ひと月のうち2,3週間は気仙沼に居て、残りは東京です。

気仙沼では事業者さんのもとをまわって、できることをひとつひとつ、対応します。ウェブサイトをリニューアルしたいということであれば、外注先との間に入ってディレクションをしたり、ウェブマーケティングの最新の事例について情報共有したり、そこから新しくなにか始めたいということに対して相談にのったり、いろいろですね。

東京ではともづなプロジェクト主催のイベントを実施したり、ともづなプロジェクトに協力を申し出てくれる方にお会いして打合せをしたり。ちょっと変わったところだと、斉吉商店さんの催事のお手伝いで、二子玉川の東急フードショーに1週間立ったりもしました。さんまのつみれ汁と海鮮丼をイートインとして提供して、牡蠣のオリーブオイル漬けの試食販売もやりました。

―催事にも立つんですか。

接客販売も出来るWEBディレクターみたいな (笑)。 二子玉川の東急フードショーというところに「オカッテ」という店舗がありまして、斉吉商店の商品を常時取り扱っているんですね。しかもイートインスペースもある。その運営母体の良品工房と斉吉商店とは10年来の付き合い。それで、「「斉吉さんの商品はこんなに簡単なのに美味しく食べられるよ」ってアピールできる東京の人いない?」ってオファーが斉吉さんにありました。たまたま私が東京に戻る機会があったので、会ってきて話を持ち帰ったら、和枝さんが「何を出すか、どういう展示にするか、藤野さんに全部おまかせします。考えるところからやってもらえますか」って。斉吉商店としてもそういう催事って初めてだったので、何をイートインで出して、何を売り場スペースに置くか、試食販売はこれを出すとか、全部企画しました。

―企画からはじめられた。あまりない貴重な機会ですね。

そう。そこで得た気づきを、facebookになにげなく記録していたのですが、オカッテの元社員さんやほぼ日の方が「すごく参考になります」とコメントをくれたんです。その一部始終のやり取りを和枝さんが見て、「これはすごいこと!貴重なので、社員とも共有したい」と。で、ぜひレポート化してほしいということで、改めて和枝さんに提出しました。私も一日一日新しい気づきがあって、「今日はこれやってみよう、明日はこれやってみよう」って考えながら仮説を作っては検証するみたいな感じで面白かった。クリエイティブなキッチンスペースですね。新宿伊勢丹と違って、二子玉川オカッテという場所では斉吉商店は無名ですが、商品の良さが伝わって、「是非次も来てほしい」というお客さんからの声もいただきました。

―ともづなプロジェクトって、前は「気仙沼情報発信力アッププロジェクト」という名前でしたが、まさに情報発信力アップをやっているんですね。

発信するために必要な準備はわりと誰でもできるんですけど、何を発信するかの「何を」っていうところまでを考えないとダメだなと。単純に「気仙沼で元気です」っていう情報だけだと、見る側も長く続かないかなと思っています。食べるものだったり、気仙沼の人だったり、何か気仙沼に関心を持つためのきっかけを見つけてもらいたい。そして直に体験してほしい。これはもう一人の右腕である小林君とも話したのですが、私たちにできる最低限のことというのは、自分たちの周囲にいる友人知人たちに、自分たちを通じて気仙沼や事業者の状況を知ってもらうこと。で、関心を持ち続けてもらって、おいしそうだと思えば買い物をしてもらったり、楽しそうだと思えば遊びに来てもらったり。そういうことかなぁと。そういう意味で、facebookは重要ですね。

―とても大事ですね。斉吉商店の和枝さんには、みちのく仕事で前にインタビューさせていただいたこともあるのですが、藤野さんから見てどういう思いでプロジェクトをやられているように見えますか。

斉吉商店さんは、震災前から催事で新宿伊勢丹に呼ばれていることもあって、気仙沼の外の状況や、外から見た気仙沼を多少なりとも分かっていらっしゃると思うんですね。「味はいいけどこのパッケージならうちでは置けない」と言われたこともあるそうですし、モニター調査の結果通りに作ったら全然売れなかったこともある。震災前から、そういう苦労があるんですよ。

そんな斉吉商店の社長や和枝さんがよく言うのは、市場で戦うための「武器」を身につけたい、ということ。武器というのは例えばソーシャルメディアの使い方であるとか、インターネットの活用です。震災前までは武器を持っていなかったとおっしゃるんです。その斉吉商店さんが、「そういう武器を得るのであれば、自分たちだけじゃなくてみんなで身につけようよ」と。それがこのプロジェクトですね。

リニューアルされた斉吉商店さんのWEBサイト

―今、ともづなプロジェクトで一緒にやっているのは6事業者だと思うけど、具体的にどことどこで、どうして集まったんですか。

6事業者のことを「気仙沼6人衆」って呼んでいるのですけど。斉吉商店、気仙沼の日本酒の蔵元で創業100年続いている男山本店、オノデラコーポレーションのコーヒー事業部であるアンカーコーヒー、ふかひれの石渡商店、海苔の横田屋本店、着物のクリーニングと和装グッズの企画開発をやっている京染たかはしですね。情報発信の分野で右腕に入ってもらおうと決まった時点で、お客様に対して営業や販売の準備が整っていて震災前からBtoCの事業を営んでいた方に、一緒に何かできればいいなと和枝さんが声をかけました。それが今の6事業者です。個々につながりはあって、京染たかはしさんと横田屋本店さんは同級生ですし、男山本店さんと斉吉商店夫婦も同級生です。

―BtoCをやってきた気仙沼6人衆が集まって、「こういうふうにしていけたら」ということはあるんですか。

「気仙沼6人衆でなにかできたらいいね」というのはずっと考えているのですけど、まだ形にはなっていなくて。でも、業種も年齢もさまざまな人が月に1回集まって「うちはこういうことやったよ」とか「こういうのがいいみたい」と情報共有したり、なにか一緒に考えようとする場があるということが結構大事なんじゃないかなと思っています。

―僕は、気仙沼6人衆のみなさんがiPadを持ってミーティングされているのが衝撃だったんです(笑)。僕は持ってなくて。

2月の初めに、私がiPadを持って6人衆ミーティングに出たら、「見せて!これが噂の…」みたいな感じになって、話の内容よりもiPadが注目されてしまいました(笑)。そこから新たにiPadを購入した社長さんもいますし、業務にiPadの導入を検討しているところもある。iPadは分かりやすい例ですが、この現象を和枝さんは「困ったときに何でも聞ける人が身近に来てくれたことは大きい。自分には関係ないと思っていたり、興味はあったけど手が出せなかったりしたことが、一歩前に進めるような空気ができたのはとてもありがたい」とおっしゃってくれました。恐縮しています。

―販促物を作ったり、facebookの講習会もやられていたりするんですよね。「藤野さんに聞けばなんとかなる」みたいな、ウェブのよろず相談屋さんのような感じでしょうか。

そうですね。ウェブもやるけど、売り子もするし、facebookでライターもする。私は、分かりやすいように「ネットの仕事をしてきました」と普段は言っているのですが、企業や商品のブランディングに関わる仕事をしてきました。特に強みであるウェブを中心に据えて、テレビCMなどの広告宣伝から、イベント、パンフレットなどの紙媒体を使ったものまで、様々な企画を複数の会社で、とにかくいろいろかじってきたのですが、それを広告代理店のようにクライアントに提案する立場ではなくて、一企業の「中の人」としてこれらを経験できたことが、今すごく役に立っていると思います。この経験を活かして、とにかく自分のできることはなんでもやりたいなと。

斉吉商店社長の純夫さんと、専務の和枝さん

―よく僕はETIC.で、「斉吉商店さんは日常が面白い」とうわさに聞くのですけど。ごはんとかご家族とか、どんな日常を送っていますか。

ありがたいことに、夕飯は月曜日から土曜日まで、和枝さんのご両親である会長と貞子さんと一緒に頂いています。貞子さんのつくる料理がおいしくて、ほっとするんですね。毎日18時に夕飯というのも健康的。そして会長と貞子さんの掛け合いは、ほのぼのしますね。詳しくは言えませんけどね(笑)

斉吉商店の社長と専務の和枝さんは、ほぼ日の「東北の仕事論」の記事の中で、「異様に距離が近い夫婦」って紹介されていたんですけど、まさにそのとおりでした。前に、斉吉商店のウェブサイトに載せる社長の写真を撮ろうと、港の方に行ったことがあるんですね。で、社長がふざけて波止場の男みたいなポーズをしたのを撮っていたら、和枝さんが「社長、いいねいいね!」ってどんどん近づいてフレームインしてきて。社長が「ちょっと、俺がうづっからどいてー」みたいな(笑)。そんな漫才みたいなやりとりが、日常茶飯事です。この和気あいあいとした雰囲気は、夫婦だけじゃなくて、斉吉商店の中にもあって、「斉吉商店は家業なので、社員も家族です。」と、社長が年始の朝礼で従業員の皆さんに伝えた言葉からも、想像できるのではないでしょうか。

―東京の一般的な企業ではあり得ないですね(笑) 。藤野さんはこれから気仙沼で起業されていくと思いますけど、今後こうしていきたいというのはありますか。

この6人衆が集まったところに右腕としてポンッと入れてもらえたのはご縁なので、仮に起業できたとしても、よろず相談屋は当面続けたいと思っています。

私にはネットという得意分野はありますけど、それは手段と捉えて、何をやるかはその時々で決めたいですね。将来はこうなっていたいという妄想はあるのですが、これをしたいというのは実はあんまりなくて、自分ができることが仕事になればいいと思っているんです。ですから「できること」を拡張したり、その質を高めていきたい。ちょっとふざけているようにも見えますけど、振り返ると、ご縁とか人とか機会に恵まれていろいろと実現できてきた気がするんです。思いつきも妄想も、念じていると、何かの拍子にかなうことがある。だからいつも頭の中は思いつきだらけですし、「妄想」も時々アップデートします。

―斉吉商店さんにも貼ってある、ダーウィンの種の起源の一節を思い出しました。

「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるわけでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である」。そうかもしれないですね。カメレオンのように変化していこうと思います。

―これからも応援しています。ありがとうございました。

聞き手:玉川努(ETIC.スタッフ)/文:安井美貴子(みちのく仕事ボランティアライター)・田村真菜(みちのく仕事編集部)

※インタビューは、7月時点で行われたものです。この後、藤野さんはみちのく起業プログラムの1期生となり、右腕を卒業しました。

みちのく起業第1期生メンバー紹介/ディスカバー気仙沼・藤野里美

■ともづなプロジェクトでは、右腕を募集中。10月5日(金)に渋谷で説明会を開催します!

右腕募集要項:気仙沼ともづなプロジェクト

右腕募集説明会:10/5(金)右腕募集説明会&プロジェクト活動報告会

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