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特集記事 良い意味での適当が大事。「行かなきゃ」ではなく「またくるね」

リーダーがビジョンを語る5951viewsshares2012.11.10

良い意味での適当が大事。「行かなきゃ」ではなく「またくるね」

被災地をNPOとつないで支える合同プロジェクト・つなプロに参加した後、慶應義塾南三陸プロジェクトの駐在スタッフや「みちのく仕事」のボランティアライターとして現在も東北に関わり続ける加納さん。みちのく仕事編集部で作成した「みちのくさんぽ」を持って、震災から1年を振り返る意味も込めて、東北の思い出の場所やお世話になった人を巡る旅に出ました。【つなプロ/慶應義塾南三陸プロジェクト・加納実久(2)】

※この記事は、宮城県・石巻〜南三陸までを加納さんと一緒に移動しながら伺ったお話をまとめた後半です。前半はこちらから。

―つなプロには、その後どのくらい関わりましたか?

4月に2回参加して、6月に再び行きました。だから、つなプロに参加したのは全部で3回です。

―3回目に参加したときは、また最初のころとは状況が違いましたか?

3回目は、地元のキーパーソンとのネットワーキングをしようとしてるエリアマネージャーのサポートをしました。人と人を繋ぐことや、仮設住宅の空き情報とか、ものより情報が求められていましたね。その頃には、宮城県内もだいぶ落ち着いてきていたので、県外よりも県内の大学生の参加が多かったです。でも、インターンとしてずっと残っている人もいたので、顔なじみもちらほらいましたね。

―当時の仲間で、今でも東北を訪れている方はいらっしゃいますか?

何人か知っていますが、会社だったり学校だったりで、行きたいけど行けない人も多いんです。その人たちに情報をシェアしたい。1年前は畳の上を歩かなきゃ辿り着けなかった蛤浜が、今は綺麗になって、牡蠣小屋が建ち、中で人が働いていて、秋には牡蠣が収穫できるなんて…。それを、1年前に一緒に行ったメンバーたちに教えたいです。

最後に、南三陸町のながしず荘にお邪魔しました。こちらは、加納さんが去年の夏休みに、一ヶ月半の間お世話になった民宿。おかみさんとそのご家族が出迎えてくれました。

―ここの家の子供みたいですね。


「慶應義塾南三陸プロジェクト」という大学のプログラムに参加して、ずっとここにお世話になっていたので。

―「慶應義塾南三陸プロジェクト」はどんなプロジェクトだったんですか?

慶應義塾大学の学生を中心に、南三陸町周辺で学習指導やイベント運営、瓦礫除去などを手伝うというプログラムでした。わたしはその現地スタッフとして南三陸に常駐して、3、4日ごとに入れ替わる学生スタッフに、内容を引き継ぐ役目をしていました。

―リーダーだったのですね。

いや、リーダーだなんて。現地コーディネーターという肩書はいただいたのですが。どうしても夏に東北に行きたくて、そういうプログラムがないかと探していたら、大学の知り合いの先生がちょうど関わっていたので、「現地にて受入や事務局のようなことをさせて頂けませんか?」ってお願いして、役割をつくりました。

―そんなに、東北に行きたかったんですか。

器用な頭を持っていないから、震災のことしか考えられなかったんです。わたしは、修士論文も東北のことを書こうと思って、方向転換しました。担当教授の専門は東南アジアだったのですが、無理矢理テーマを変えてしまって。

―まさに東北づくしですね。加納さん、これまで何回東北に行ったことになりますか?

つなプロ、慶應のプロジェクト、みちのく仕事の取材…5月と2月は行かなかったけど、大体月一回ペースですね。回数にしたら10回以上かな。

―どういう気持ちで行き続けているんですか?意図的に忘れないように行っているのか、それとも行きたくて行っているのか。

帰りたい!って感じ。ながしず荘では、娘みたいに迎えて頂けるし、田舎が増えた感覚ですかね。

―震災から1年以上が経ち、ボランティアの役割も落ち着き、多くの人は、東北に行くきっかけを持たなくなっていますよね。

まだ、自分には行く時間とお金の余裕があるけど、行きたくても行けない人もいる。興味のない人もいる。そういう人たちに、わたしが情報をシェアしていけたらいいな。現地の人の中には忘れられるのが嫌だって声もある。だから、わたしが発信することで、忘れない人がいたり、新しく興味を持つ人がいたらいいと思う。そうすれば、それまでは機会がなかった人からも「俺こんなのできるよ」って手を挙げる人が現れるかもしれないし。

―みちのく仕事でライターをやりはじめたのも、そういう理由からですか?

定期的に情報を届ける、ということがやりたくて、フリーペーパーをつくれないかと考えていた時期があったんです。でも、資金がないしどうしよう、というときに、みちのく仕事のことを知って。

―加納さんが、みちのく仕事のライター第一号なんですよね。

つなプロが一段落した頃だから、去年の5、6月かな。まだ「みちのく仕事」という名前もついていなかったときで、東京でもできる活動として、ETIC.のイベントで募集していたんです。

―それで応募したんですね。

1人で1からメディアをつくるところからやったらハードルが高いし、みちのく仕事のコンセプトにも共感したから、「これしかない!」と思って。

―本当に、フットワークが軽いですね。もともと行動的な性格なんですか?

自分が動けるのは、「百聞は一見にしかず」は本当だということを知っているからだと思います。学生時代に、バングラデシュで2週間のスタディープログラムに参加したんです。参加者兼スタッフ兼現地のパイプ役をするインターン生として。現地の人と会って話して、迎え入れられている感じがしました。そこで過ごした時間があまりにも充実していて、「なんだ、動いた方がいいじゃん」と思って以来、ネジが一個ポンッと抜けて。

―制御装置が壊れた(笑)

日本で国際協力と開発学を学ぶ以上、政府や国際機関がどうこうとか、そういうマクロな視点が多いじゃないですか。でも、そうではなくて、あの村のAさんがこんなことに困っている、という話の方が、自分の中にすんなり入ってくる。バングラデシュに行ったことをきっかけに、変わりましたね。

―ネジが外れる前は、どんな性格だったんですか?

後のことを考えて、言い訳を立てて、結局やらないことが多かった。昔は絶対に「どうにかなる」なんて言いませんでした。今は、「どうにかなる」が口癖です(笑)

―大学を卒業し、4月から社会人として働かれていますよね。これからは、学生時代のように頻繁に東北を行き来したりできないのではないでしょうか。

それでも、きっと「帰りたい場所」とは思っていると思う。特に南三陸は。忙しくて、数年に1回になってしまうかもしれない。でも、「またくるね」という約束を守りにいきたい。それが1ヶ月後だろうが1年後だろうが。「行かなきゃ」という制約に縛られるのは違いますね。良い意味での「適当」が大事だと思います。

―加納さんの、東北との付き合い方は、肩の力が抜けていますね。東北にボランティアに行ったけれどその後どう関わっていけばよいか分からない人や、行ったことがないけど気になっている人にとって、きっと参考になると思います。お話ありがとうございました。

〜おまけ〜

「みちのくさんぽ」5月号に掲載されているお店を、加納さんと一緒に少しだけ巡ってみました。

□ まきいし

このお店の名物は「陶板焼ハンバーグ」。「言葉では表現しきれない美味しさ」と聞いていましたが、本当にその通りでした。特製あんかけダレと一緒に陶板で熱々に蒸されたふかふかのハンバーグを、ポン酢につけていただきます。口に入れた瞬間、絶妙すぎる味と食感に驚き!どこを探しても2つとない味です。


【住所】宮城県石巻市中央2-5-10【営業時間】11:30〜13:30  17:00〜19:30【定休日】月曜【電話】0225-93-4680

□ 南三陸さんさん商店街

お菓子屋さんや雑貨屋さんなど、色々なお店が30軒集まった大きな商店街です。編集部が行ったときはゴールデンウィークのお昼時だったので、とても賑わっていました。なかでも行列をつくっていたのは、海鮮丼のお店。大粒のウニがどっさりのった南三陸名物の「キラキラ丼」は、複数のお店でそれぞれの味を楽しめるようになっています。全種類試したくなる!

【住所】宮城県本吉郡南三陸町志津川御前下59-1【営業時間・定休日】各店舗による【URL】http://www.sansan-minamisanriku.com/

□ ながしず荘

町の南に位置する宿。津波で被害を受けた一回のお風呂と客室を修復して営業中です。明るいおかみさんのおもてなし、三陸の魚介をつかった美味しいご飯が楽しめます。中でも素晴らしいのは、「この湾全部自分のもの!」と思えるような食堂からの海の景色。ぜひ味わいにいってみてください。

【住所】宮城県本吉郡南三陸町戸倉字長清水30-1【電話】0226-46-9248【URL】http://www.m-kankou.jp/alacarte/index.php?id=33【Twitter】@minsyukunaga

全部は回りきれませんでしたが、みちのくさんぽには、ほかにもグルメや買物、宿情報がたくさん載っています。ぜひお手に取って読んでみてください。

聞き手:笠原名々子・藤田展彰(みちのく仕事編集部)/文:笠原名々子

■「みちのくさんぽ」はこちらから入手できます。

http://michinokushigoto.jp/wp-content/uploads/2025e853a308a41997d0b4b17997cf7b.jpg

■関連インタビュー:日和山公園から蛤浜へ。つなプロの日々を振り返るみちのくさんぽ【つなプロ/慶應義塾南三陸プロジェクト/みちのく仕事ライター・加納実久(1)】

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