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特集記事 雄勝からはじめる、「食に込めるエネルギー」

リーダーがビジョンを語る1177viewsshares2011.10.31

雄勝からはじめる、「食に込めるエネルギー」

震災の翌日から仙台に入り、食のプロジェクトで仙台を励まし続けている立花貴さん。長年食品業界に携わってきた立花さんが、仙台の生産者たちと交流する中で気がついたこと。目指すべき食品の未来とは。「グッとくる」を軸に、お話していただきました。【カキ・ホタテ養殖復興プロジェクト・立花 貴】

-3月11日はどちらにいらっしゃったんですか。

東京にいて、ちょうど電車に乗っていました。すぐ実家に連絡したのですが、つながらなくて。結局その日東北に入ろうと思ったんですけど入れなくて。それで、翌日こっちに来て、避難所を何箇所か回って母と妹の無事を確認しました。家に戻ったら大規模半壊。でも住める状態だったので元に戻して、その後は避難所で炊き出しや物資輸送をしました。僕が入った避難所が、津波の危険区域ってことで行政の人が来なかったんですよ。「危険区域には入らない」ってルールがあったみたいで。非常時でもルールを守るっていうのが強烈なところですけど。

-確かにそうですね。

はい。それで結局そこには1週間、食料と人が行き渡らなかったんですよ。だから、民間に声がけをしました。そしたら食料を運んでくれて、ツイッターで呼びかけたり色々しているうちに行政の人も来てくれて。で、立ち上がった。

-今の活動はどういうきっっかけではじまったのですか。

東京の知り合いのパティシエが、「被災地でも誕生日とかあるだろうし、ケーキを送れないか」って言ってくれて、ケーキを送る活動が始まったんです。これはかなり早かった。震災後2週間目くらいから。だいたい1回あたり1000個くらいケーキを届ける活動を、毎週繰り返して。これが社団法人Sweet Treat311の名前の由来なんですけども。あとは、小学校の給食を作っていました。

-小学校の給食を?

仙台で炊き出をやっているときに、たまたま雄勝小学校の校長先生に出会って。その時の第一声が、「とにかく子どもたちに腹いっぱいご飯を食べさせてあげたい」と。その一言にグッときたんです。例えば、僕らが避難所にスイーツを900個持って行って、そこの避難所に1000人いると、当然食べられない人が出てきますよね。炊き出しの場合もそうなんですけど。正解はないし、間違えても誰も責めないのですけど、ミスはしたくないという思いがあったんです。その中で佐藤校長の言葉を聞いて、胸が熱くなって。

—立花さんに出会った時、雄勝小学校の生徒たちはどのような状況だったのですか?

雄勝小学校のみんなは、全員避難所生活で、食事もままならない。そんな中、学校給食がはじまったのですが、まだ石巻市はパンと牛乳という状態だったんですよね。教育委員会に校長が「足りない」とかけあったけど、「一校だけ特別扱いはできない」と断られたそうで。たとえば仙台の子どもたちよりも雄勝の子どもたちは、家に帰ってもご飯がない子が多いだろうし、その判断はおかしいんじゃないかと思いました。だから、翌日から雄勝小学校の給食に関わると約束して。最初はあてがなかったので、家で作っていたんですよ。学校給食を100人分。しばらく続けていたのですが、見かねた仙台JCの方がそこでやっとバトンタッチしてくれて。

―震災の前はどうしてらっしゃったんですか。

もともとは、伊藤忠商事に6年いました。6年といっても、6年のうち3年はファミリーマートに出向していたんですけど。で、辞めてからは、伊藤忠含め25社くらいに出資してもらって、食品流通の会社をつくって社長をやっていました。それも去年の1月に退任して、そこから地域活性化事業をやりはじめました。日本の食文化と伝統工芸を世界に発信するプロジェクトで、地元の人と地産地消でいいものを発信していくということをやったり。

―今までの取り組みや人脈を生かして、震災直後からさまざまな動きをしている立花さんですが、今後はどのようなことを考えているのですか?

雄勝は、高齢化が進んでいるし、後継者が不足しているという問題があります。そこでは、引き継ぐ人が自分の子ども以外にいないんですね。新しい人が入ってきにくい。「雇われたい!」という魅力がないんですよ。牡蠣1個の単価をたとえばその20円を1.5倍にしてあげられたら、年収が1.5倍になるんですよ。その部分を新しい雇用にできる。だから新しい流通の形で販売できるようにしようと考えています。そして、買う人と一緒につくる日本の新しい漁業の形をつくろうと思って。

―その話は漁師さん側から上がってきた話なんですか?

そうです。漁師さんたちに相談を受けて、「グッとくる商品をつくって、食品の流通会社に一緒に売って行きましょうよ」と。そこでのジレンマは、大きな規模で求めると、「大規模チェーン型」になってしまうので、そこをぐっとこらえて、いいものを作ってここで食べて、余ったものを外に流すという感覚にもっていきたいと思っています。

―なぜ「大規模チェーン型」は良くないと考えるのですか?

外食のプロやマーケティングのプロも雄勝に一緒に来て活動していただいているんですけど、彼らの話に共通していることがあるんです。それは、「これからの食というのは大規模集中型、巨大外食チェーンの時代から、地域自立型のネットワークの時代になる」ということなんです。本当にみんな、それを口々におっしゃっていて。

―立花さん自身はどう感じますか?

今回震災があって、あらためて食の意味合いとか、食の大切さとか、思うところがあって。僕は今まで食品業界に関わってきたのですが、その時はカロリーとか栄養素とか、そういうことが考える対象だったんです。でも、これからの時代っていうのは、つくる人が「食に込めるエネルギー」っていうのが大事になってくるんじゃないかと思いますね。

―食に込めるエネルギー?

これは説明が難しいんですけど…。東北の人ってぼそっぼそっと喋るじゃないですか。でも、生産者の人が何かに対して発する言葉って、グッとくるんですよ。ぼそぼそしていても、エネルギーがあるんです。僕は、「食に込めるエネルギー」ってあれだと思うんです。その言葉っていうのは、「よくしゃべろう」とか「かっこつけよう」じゃなくて、沸いてきているものなんですよ。そのエネルギーです。説明しがたいですが、これからはその説明しがたいものが評価されると思います。作り手のストーリーを伝えるだけではなくて、そこには本当の作り手のエネルギーが入っていないといけない。そうでなければ、それは3.11以前の話なんじゃないかな。

―確かに、こちらの生産者の方の発言は、静かだけど力がありますよね。

グッとくるじゃないですか。どんな偉い人もそういう言葉を聞いて固まりますよね。そこには想い、人間の内面から沸き上がるエネルギーが入っているんですよ。いまさらながらに、こういうことだったんだなって。東京の会社員時代、よく怒られていたんですよ、上司に。「お前の言うことは綺麗すぎなんだ。グッとこない」って。それがどういう意味か分からなかったんです。それが震災後、「なりふりかまわない」「やれることは全部やりきる」って覚悟で動き始めてから、分かるようになったんです。「グッとくる」っていう感覚が。

―その「グッとくる」感覚は、3年後、5年後も変わらない感覚なのでしょうか。それとも震災直後特有なのでしょうか。

積み上げてきたものが、一瞬にしてなくなってしまう、という状況を目の当たりにして、確実に価値観が変わったと思うんですよ。いつ死ぬか分からないから、「グッとくるもの」に重きをおいて動いてないともったいないなと思うんです。セミナーのときに話したけど、人には「生きがい」と同じように「死にがい」があるということを聞いたんです。「これだけ多くの人が亡くなったということは、その人たちが亡くなった後の、残されたものの意義がある」という話を聞いて。「死にがい」を残された人が実現しなければいけない。それは全く同じものをつくるのではなくて、全く新しいものをつくるということ。どの町も助成金ありきで全てが成り立っている。それは持続可能じゃないってことですよね。持続可能な形にしていくべきだし、それをこのタイミングにやらないと。僕らがそれをできる最後の世代だと思うんですね。

―震災以前は、なぜグッとこなかったんでしょうか。

その時は頭で考えていました。「こう言ったらこういう風に見られるんじゃないか」とか、「よく見られよう」とか。今、僕そういうの全然ないんですよ。湧いてきた、グッとくることをやるし、人がどう思おうが気にしない。

―ふっきれた瞬間というのはあったんですか?

ないですね。動きながら。今まではなんとなくやっていたんです。本気出してなりふりかまわずやってみた後に、なんとなく「こういうものだったのかな」と感じられるようになりました。前は、沸いてきていないのに、沸いてきているように喋っていたんです。僕は器用にやるところがあるので、そこでごまかしていたんですね。今、やりたくないことをやらないんですよ。自分がグッときてないことはできないんです。

―最後に東北に来ようと思ってもなかなか来れない人にメッセージなどありますか?

これは僕の言葉ではないですが、「心ある人は今動いてる」「このタイミングで人の真価が問われる。本物か偽者かっていうのが選別されるんだ」という言葉が印象的でしたね。とにかく、僕のやっている合宿所に来てください。一緒に雄勝に来て、肌で感じてもらって、一緒に見て、一緒に感じましょう。「感じて既に動き出している、内側から湧き出るエネルギーに突き動かされている」これが私のいうグッとくるのイメージです。動くっていうのは大切です。まずは思うより動いてみる。来て話せばグッとくるので。決して作業だけやって帰るんじゃなくて、グッとくる人と出会って帰って欲しいです。そしたら動き方が変わる。グッとくる、湧いてくる方へ動けるようになります。

―「まずは思うより動いてみる」。力強いお言葉です。お話ありがとうございました。またお伺いします。

■右腕募集情報:カキ・ホタテ養殖復興プロジェクト(募集終了)

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