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特集記事 今こそはじめる新しい水産屋のカタチ

リーダーがビジョンを語る1724viewsshares2011.09.28

今こそはじめる新しい水産屋のカタチ

気仙沼で水産業を営む老舗、斉吉商店。津波で工場や店舗が被災し、壊滅的な被害を受けたものの、各所の支援を得て主力製品の「金のさんま」の製造を再開した。今回は、水産加工業のことや現在抱えている課題について、専務取締役の斉藤和枝さんにお話を伺った。【株式会社斉吉商店・斉藤和枝】

―気仙沼は水産業者が多い土地ですね。

お客さんに直接販売するのではなく原料で渡す会社が多いんですよ。たとえば、サンマが水揚げされたとしますよね。冷凍するだけの工場があるんですよ。それが何社もあるんです。そして、今度はそれを転売するだけの会社がある。またさらに、原料をうちみたいに買って加工して売りたいところもあります。ただ、これも売り先がさまざまで、たとえば生協さんやイオンさんに売ってますよってところは発信はいらないですね。でも、それではせっかく生み出した付加価値が全部よその地域に行ってしまうんです。

―なるほど。

実は私、すごく前からお菓子屋さんのような水産屋になりたいと思っていたんです。たとえば新潟に鹿島屋さんというところがあって、北海道にも六華亭さんという会社があって、そういうところが全国に商品やお菓子を供給してますよね。そういうことが水産ではあまりないんですよ。新潟の鹿島屋さんは鮭の切り身をやられていますけどね。自分でつくって自分で売る。そして「私はこれを500円で買ってほしいんだ」と自分自身で値をつける。流通の人にお値段をお任せするのではなくて、私はこれを500円で買ってほしいと自分でいえる仕事がしたいなと思っていたので、お菓子屋さんのようなことが水産には必要だと思っています。

―自分で売っていきたい。ほかの業者さんはどうなんでしょうか。

業者の間では温度差がすごくあります。まず被災の度合いが違いますし、今後の計画が見えない人がまた多いんです。どうやって自分たちが再出発していくのか見えていない。銀行さんとお話をしても、これからどうするかわからなくて計画が出てこない人ばかりだと伺います。もうどうやって立ち上がったらいいのでしょうか…、となってしまう。特に水産関係は排水処理ができないのと、土地もないという二つの足かせ、さらに二重ローンですので、どうやって立ち上がればいいのかわからない。銀行さんも、支援したくても全然なにやりたいのもわからないものに金は出せないと愚痴をこぼしています。困っているからまとまりそうなものなんですけど、お家の事情がそれぞれ違いますので。

―難しいですね。

農産物にしても海産物にしても、ものすごくいいものがありながら、どうしても発信能力が弱いために思うように出ないということがあります。この溝がどんどん埋まるような仕事が増えてくるといいなあと思っています。自分たちのものがすばらしいのはわかっていても、言い方がわからないです。なにやら東京に持っていけばいいんだなというふうには思っていても、なにせ全国からいろんなものが来ているところに、どういう風に発信すればいいのか。

つくったものを自分で売っている人は気仙沼にはそんなに多くはないんですけど。そういう人たちが育つということ、私たちが「こういうやり方があるよ」ということを示すことは、絶対マイナスではないと思うんですよ。私たち、被災したので、今全部ない状態じゃないですか。だから、ここに新しいものを積み上げないといけない。そんな使命があるんじゃないかと思うんですね。

―被災した今だからこそ、それをチャンスに発信能力を伸ばしたいところですね。

もともと被災前から、自分たちの今やっていることをお知らせする活動だとか、自分たちが外からどういう風に見てもらえばいいか、なにを軸に発信すればいいのか、ということがよくわからなくて。東京の人が気仙沼を見ると、東京のお客様に合ったかたちで商品を発信できるのに、私たちだけだと難しいんです。それを高島屋さんの通販サイトさんにお願いしたときに気づかされました。あまりにもわかってるだけにかえって、「さんまってこうだよ」とか「かつおってこうだよ」とかを外の人たちがわかるような形にすることができない。これは、震災前からすごい壁だったんですよね。

だから情報発信能力みたいなものをもっと高めたいです。というか、高めないとだめですね。震災のあとに、一番必要だと感じていることです。こうやって東北にある程度目を向けていただいているうちに、そういうことをどんどんしないと気仙沼は丸つぶれだと思いますね。ただ、商品をつくることは、現実は大変厳しいです。地盤もこの通りですし、排水もこの通りですし、できないことだらけなんですね。だからといって「できない」と言っていると、気仙沼がなくなってしまいますね。

―いま発信しないと、後がないということですか。

宝の持ち腐れ、そう思うんです。あわびありますカキあります。じゃあいくらで売ってるのって。みんな生活にやっとの位の値段でしか売れてないんですよ。これから、もし、漁業の六次化というふうなものができるには、やっぱり販売するというところの能力をスキルアップしておかないといけないですよね。

気仙沼ってわざわざ来ようと思わなきゃ来れない場所なんです。ちょっとついでに寄っちゃったという場所ではないんですよ。情報発信能力がないと埋没しますよね。わざわざ「あら、なんかあるからついでに行ってみっぺ」というところではないですから。わざわざ来ないといけないからこそ魅力のあるところだと思うのですけど、だからこそそれなりの売り方が必要だと思うんです。震災でこうなりましたけど、前から困っていたんですから。私も原料調達なんかで青森とか北海道とかぐるっと歩いてきましたけど、私たちが抱えていた問題と同じものをみんな抱えているんですよね。だから全国ほんとに同じことなんですよ。

―埋没しないよう、情報発信していく。

はい。でも、正直現実はとてもそれどころではないんですよね。何せ、私たちであれば、工場をはやく稼動させて、とにかく金の秋刀魚を炊く。これに終始一貫しているので、もうそれだけに労力をつぎ込んでいますけど。それ以外、元々そういうことができる人がいないので・・・。外の目をもっている人がうちの会社にいるということはなかなかありえないので、どうしても外の人たちとつながって、そういう目を、視点を、うちの中に入れるということをこつこつやってはいるのですが、なかなかやっぱり進まない。

―情報発信に詳しい人や、知恵が足りない。

そうですね。たとえば「金のさんま」ができたとしてネットで販売を再開するにしても、どういう風な打ち出し方をしようかなと考えたくても、工場の方はこういう風に機械を入れなきゃいけない、電気屋さんと話をしなきゃないという状態なので。なんかもう、「うっ」てなってるんで。本当にもとの業務に戻すために、3倍も5倍も労力をかけないとだから。引き出しをあけると消しゴムが入っているのは当たり前だったんですよ。それがなくなるなんて、想像したことないですもん。パソコンだって全部データをだめにしました。全部、また一から起こさないといけないなんて考えただけでもぞっとするでしょ。

―それでもやらなければいけないと。

若い人たちが学校に行くとかそういうことじゃなくて「今これを売らなきゃならない」っていうところから伝えるものは出てくるし、それでなおかつ会社の考え方やら、会社の空気というものがそういうところに盛り込まれていかないと本物じゃない。

ツールがないわけではないです。インターネットもツイッターもあるけれど、その発信の仕方がわからない。だから、外の目を持った人たちが東北に来てくれて、三陸に来てくれて。それでその方たちの目でもって発信するような能力のある人たちが来たら、とても面白いところに視点が行ってくださるのではないかなあと思います。それで食べ物の材料とかだけじゃなくて、気仙沼にしかない漁師の文化だとか、そういうようなものを、「あ、これは面白いよね」と拾ってくれて、私たちの商品と一緒に外に出していければ、三陸のものって、もっともっと価値が上がると思うんですよね。

―設備の回復などやるべきことがたくさんあるなかでも、商品だけでなく、気仙沼についても、もっといろいろ発信していかなければいけないんですね。お話ありがとうございました。またお伺いします。

■「右腕」マッチングフェア■

斉藤和枝氏は右腕を募集しており、10/1マッチングフェア第二部に参加します。

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