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特集記事 通院・通学…被災地の生活の足をつくりたい

リーダーがビジョンを語る5276viewsshares2011.08.01

通院・通学…被災地の生活の足をつくりたい

被災地の生活の足をつくろう!――仮設住宅やボランティアセンター、病院などをバスでぐるぐるまわって被災地を応援しようとしている、「ぐるぐる応援団」というコミュニティバス運行プロジェクトがあります。今回は、その代表である鹿島美織さんにお話を伺いました。【コミュニティバス運行プロジェクト・鹿島美織(1)】

 

 

-ここに来た経緯を教えてください。

被災したあと、自分で何かできることはないかと考えていたんです。でもはじめは「専門家でないと邪魔になる」という情報が流れていたので、3月末まで待っていました。そのあと、長崎の小児科の先生から、絵本やおもちゃを集めて贈るという呼びかけがあって。何段階かに分けて2000冊ぐらい本を集めたんですが、送る手段がなかったので自分で持っていきました。そこで避難所の現状を知ったんですね。喜ばれるところもあれば、3日、4日前に自衛隊が入って、おもちゃもたくさんあるというところも多かった。避難所間に格差があることもわかって、歌津(宮城県南三陸町)では4月なのに水が必要だ、とかいろんなニーズがあった。なので、一歩引いて情報支援をすることが必要だなーと思うようになりました。そのときに「つなプロ(被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト)」のことを知って、知り合いの記者の縁でつなプロ事務所に来たのがきっかけですね。翌日から、マッチング班として活動を始めました。

-ここに来るまでは何をしていたんですか。

SFCを卒業して、その後リクルートに勤めて独立しています。リクルートでは、最初にシステム系、その後はリクナビやリクナビNEXTの企画やゼクシィなどの制作ディレクションをやっていました。お客さんの売り上げは120%あげてきたのが強みで、そのスキルを持って外に出たんです。

-なるほど。独立したあとは?

テーマパークさんなどのブランディングの仕事や、ウエディングのコンサルティングなどを行っています。その他に、医療現場のニーズヒアリングやグループインタビューの仕事が来まして。去年は、地域の医療連携の取材などをしていましたね。医療と情報というテーマで仕事をすることが多くて。医療知識は少ないんですけど、看護師や地域医療をやっている先生方と話す機会が多かったです。聞けば聞くほど、医療費がつみあがっている現状や、医療の硬直化に対する問題に直面していきましたね。でも、漠然と「やばいな」という感じでした。

-今の活動は、そもそもなぜはじめようと思ったんですか?

買い物の足に困っている人の数は仰山いるんです。仕事があって、車を持っている人は困っていないけど、それ以外の人たちは困っている。そもそもは、「通院ができない」「通学ができない」という声が、つなプロの避難所アセスメントにおいて圧倒的に多かった。入浴の介助に困るとか。で、たいていのことは自分達で電話して、つなぎ先を新規開拓してマッチングできたんですけど、移動のニーズだけはなかなかマッチングできなくて、めちゃくちゃ悔しかった。気になって、1ヶ月後に様子を聞いてみても、状況は変わっていなかったんです。

-どういうことですか。

対応してくれていた移送ボランティアの人たちも、ずっとやってくれるわけではないんですね。1回は対応してもらえても、継続して発生するニーズに対応ができなくなっていくんです。私自身も運転できなくてボランティアに来たんですね。だから、運転できないこと、自分で移動できないことのストレスを凄く感じて。自分がここに住んでいて被災したら困るなと。高齢者だけで少人数で固まっている避難所だったら、更にですよね。

-自分の体験でもあるんですね。

Web上だけでものを動かすサービスもあるけど、実際には届いていないことが多いんです。ネットは場所を越えていろんなことを束ねられるし、うまくいけばビジネスチャンスになるけど。でも、特に高齢者が中心となっている現場では通用しないこともある。被災地に来て、現実を見て、ネットだけでは動かないことを痛感しましたね。

-具体的には、どういうニーズがあるんですか?

宮交バスで、女川から最寄のイオンまで片道350円、往復700円かかるんですね。JRの渡波駅から徒歩7分ぐらいのところにイオンがあって、女川から渡波駅までは片道200円で行けます。なので、少しでも交通費を安く済まそうと、(JRが復旧していないので)代行バスに乗って渡波駅から歩いていくっていう現状があるんです。冷蔵庫もないから食べ物は日持ちしないので頻繁に通わないとならない。杖をついているようなおばあちゃんには歩くのは本当に大変なんですね。

-毎日だと負担ですね。

良くも悪くも価格の問題がありますね。私たちも民業圧迫にならないようにとは思うんですけど。避難所での一畳の生活から仮設に移れたから、少しでも自分らしい生活をするためにも、買い物には行きたいという声を大事にしたいなと。通院のニーズもあるんですよ。女川の総合体育館は、すぐそばに町立病院があって、専門的な治療でない限りはそこで済ませている人がほとんどなんですね。でも、避難所から仮設住宅に移ると状況が変わるんです。車で10分かかっちゃう。仮設に移ると車がないと不便だからと、車の購入に走っている人が多いですよ。例えば「今は娘さんが失業中だから問題ないけど、復職すると足に困る」という人たちも出てくる。

 

 

-いま一緒にやっているのはどんな人ですか?

南三陸観光バス株式会社の高橋さんという方です。13台大型バスがあったけど、全部津波で流されてしまって。20人から30人乗れる、3台の小型マイクロバスだけが残りました。「神様から『地域の足になりなさい』と言われた気持ち」と高橋さんは言ってますね。そのあとは、借金をして中古のバスを16台集めて、前向きに動いています。今、女川でスクールバスを10台走らせているところです。

-活動はどんな状況なんですか。

運行経路を仮決めして、ニーズと合っているかを確認しています。どのやり方であればニーズに正しく応えられるのか、を把握して設計するフェーズですね。たたき台がないとヒアリングもしづらいため、行政やバス会社を回って、今日現地に確認にいったところです。7月の頭までには、これを終了させて、女川・雄勝で走らせたいんです。それは自己投資でやるつもりです。地域のバス会社と連携して話を進めていくためには、プランだけじゃダメで実行に移っていないと相手にされないんですよね。

-今のフェーズが終わったら?

第2フェーズは仮設住宅にスライドしていきます。エリアによって異なるけど、雄勝の中で仮設住宅にいる人などには7月中には1回目のレビューができる。雄勝に住んでいたけど、周囲にちらばった人に関しては8月になりますね。4800人の町民のうち、3800名が町外にいるんです。

-活動の課題は?

どうやって採算路線に乗せるのか、ですね。ニーズがあるのは確かなんですけど、どうすれば事業モデルが成り立つのかがまだ見えていないんです。月に1200円ぐらい市民から会費を回収し、不足分を行政が補填するモデルなど考えてはいます。

-どんな人を右腕に求めていますか。

ニーズのアセスメント作業を大量にやる必要があるんですね。地理を把握して、インタビューした人の背景を理解しながら調査を進めていく必要があるので、そういうことが得意な人。あとは、Webでの発信もしていく必要があるので、物を編集する力のある人だと嬉しいです。

 

■続編はこちら:便利になると困る?被災地の入り組んだ現実【コミュニティバス運行プロジェクト・鹿島美織(2)】

■右腕求人情報:コミュニティバス運行プロジェクト

 

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