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特集記事 ここで作った国産ギターを、東南アジアで販売したい。まずは売上5億円。株式会社セッショナブル

地方創生のヒントin東北12293viewsshares2016.04.15

ここで作った国産ギターを、東南アジアで販売したい。まずは売上5億円。株式会社セッショナブル

●梶屋 陽介氏/株式会社セッショナブル代表取締役
御茶ノ水の大手楽器小売店に勤務し、大手楽器店のトップセールスマンとして月100本のギターを販売する傍ら、震災を契機に東北での楽器、音楽に関わる支援活動を始める。その後退職し起業。ギターで復興を後押しすべく東北に移住。現在、宮城県女川町在住。(写真:和田 剛)
●株式会社セッショナブル
2014年11月に仙台市青葉区一番町に国産ギター専門店「GLIDE」をオープン。2016年2月より、宮城県女川町にてエレキギターの生産事業を開始予定。東北の木材と伝統技術を活用し、国産の魅力溢れるギターの生産事業を通じて、町の雇用、産業、観光の発展に貢献していくことを目指す。

御茶ノ水の大手楽器店のトップセールスマンであり、動画を用いたギタープロモーションコンテンツのパイオニア的存在として成功してきた男が、東京を離れ、東北の地で起業をした。狙うは東南アジア市場。

写真右:株式会社セッショナブル代表取締役の梶屋陽介さん、左:右腕として参画した公認会計士の山口英朗さん。地域での創業志望の一人として、スタートアップベンチャーに2015年秋から参画。(写真:和田剛)

写真右:梶屋陽介さん、左:右腕として参画した公認会計士の山口英朗さん。地域での創業志望の一人として、スタートアップベンチャーに2015年秋から参画。(写真:和田 剛)

月産150本の生産ラインを女川に。

2016年2月、宮城県女川町の駅前商店街に、新たな工房がオープンする。種子島出身の梶屋陽介さん(32歳)。御茶ノ水の大手楽器店のトップセールスマンだった男が、東京を離れ、東北の地で工房を立ち上げた。「ギターの国内市場は約300億円。そこも狙いたいが、いま市場が凄い勢いで伸びている東南アジアの市場でも勝負していきたい」と、その意気込みを語る。

宮大工の技術を取り入れた、こだわりの高級国産ギター
気仙大工さんとの商品開発は着々と進んでいる。

気仙大工さんとの商品開発は着々と進んでいる。(写真提供:株式会社セッショナブル)

何で勝負をしていくのか。そのこだわりは強い。軽くて丈夫な質感のある三陸の杉の木を使い、製造工程では宮大工(地元に技術が伝承されている気仙大工)の技法を取り入れるという。「釘などの金具を一切使わない宮大工の技術を使うことで、独特の音色を出すことができる。ギターの世界は差別化が重要になってきている。国産材と宮大工技術を使ったギターを1本30万円ほどで販売することを考えている」。ギターの市場を知り尽くした梶屋氏は、その展望を見据えている。

 

東北にギター職人という新しい仕事の選択肢をつくる

震災当時、御茶ノ水の大手楽器店で働いていた梶屋氏は、自分のネットワークを使って、東北にミュージシャンを呼び、被災者を励ます活動を続けていた。もともと30歳になったら独立しようと考えていた彼は、どうせやるのであれば、東北に貢献するような新しい産業をつくりたいと思うようになっていた。「ギター製造の専門学校は卒業してもほとんど就職先がないのが現状。工房をオープンすることを伝えたところ、働きたいという問い合わせが殺到しています。これまでこの女川になかったギター職人という選択肢をつくることができれば、若い人たちがこの町にやってくる理由をつくれる。彼らが宮大工の技術を学ぶことで、地域の伝統技術も守ることができます」。

なぜ女川を選んだのか ー 飲み会が、まちの「戦略会議」の場
飲み会の場では年齢も立場も超えて、活発な議論が展開される。

飲み会の場では年齢も立場も超えて、活発な議論が展開される。(写真提供:NPO法人アスヘノキボウ)

 

ある縁で女川町を紹介された梶屋氏は、町長室で事業計画を伝えた。その日の夜に、地元の中華料理屋、金華楼で開かれた飲み会には、町長はじめ、役場の職員、観光協会や商工会のメンバー、若手の経営者、NPOのリーダー、その他、震災からのまちづくりに取り組む仲間たちが集まっていた。「みなさんにも事業の説明をさせてもらいました。みなさん「やろう」と。金華楼の店長が、以前から自分の動画を見てくれていたみたいで、すごく盛り上がり、ここでやりたいという気持ちが高まりました」。

 

ここじゃなかったら、こんなスピードでやれなかった

梶屋氏は、面白いエピソードを教えてくれた。「実は、正式にこの商店街で工房をオープンするための申込書とか申請書とか、書いていないんです。飲み会の席で、「プロムナード(駅前商店街)で工房やったらいいよ」と言われて、「そうですね。ぜひ」と話をしたら、気づいたら商店街の中で、一番大きい場所を用意してくれていました(笑)」。みんながおせっかいに動き回り、誰かのやりたいという思いを支えていく。そんなアイデアを形にしやすい人間関係が、この女川という町にはある。金融機関からの資金調達も無事進み、スタッフも雇用し、準備は着々と進んでいる。自社オリジナルギターの最初の顧客も決まった。「シリアルナンバー1番(顧客第一号)は、町長です(笑)」。

 

プロムナード内で準備を進めているギター工房。新たな観光コンテンツとしても期待される。(写真:和田剛)

プロムナード内で準備を進めているギター工房。新たな観光コンテンツとしても期待される。(写真:和田剛)

 

 

 

 

★女川町長からのメッセージ「新しいスタートが世界一生まれる町へ」
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女川町長 須田 善明氏(写真:和田 剛)

「協働すること。これを大事にやってきました。飲み会の場はとても大切で、新しいことはこうした場から生まれています。この時は町長ではありません。ひとりの町民、須田善明としてその場にいます。ここまでは民でやるから、ここからは行政でやって欲しいとか、そうした議論が飛び交います。女川町は「新しいスタートが世界一生まれる町」というキャッチフレーズを掲げました。選択される町をつくるためには、エリアとしての価値、受け入れる側としての価値をどうつくるかが必要になります。被災地は日本の地方の未来と言われてきました。課題先進地でもあると。であるならば、それは可能性のあるまちだと考えたい。これからの道のりを通じて、新たな価値や地方の可能性を生み出していくこと、それこそが、私たちの役割です。」

東北の資源を生かし、アジア進出を目指すセッショナブルの動きに目が離せない。

株式会社セッショナブルが運営するギターショップGLIDEホームページ http://glide-guitar.jp

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