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特集記事 要介護高齢者向け配食サービスで、地域の健康をまもる

リーダーがビジョンを語る8669viewsshares2013.10.03

要介護高齢者向け配食サービスで、地域の健康をまもる

宮城県塩釜市で、疾患・噛む力に合わせた要介護高齢者向け配食サービス「愛さんさん宅食」を行っている株式会社ソーシャルプロジェクト。「ジョンソン・エンド・ジョンソン × ETIC.右腕派遣プログラム」に参画し、この秋から右腕を新しく募集しています。右腕の経験を経て、現在は代表取締役としてプロジェクトを推進する小尾さんにお話を伺いました。【愛さんさん宅食・リーダー・小尾勝吉さん】

愛さんさん宅食(塩釜市)の右腕募集要項

 

 

-まず、愛さんさん宅食のプロジェクトの概要について教えてもらえますか。

被災地域のご高齢者や要介護者さまに向けて、糖尿病、高血圧、腎臓病のような病気の食事制限や噛む力にあわせたお食事を、在宅向けに宅配する事業です。配達時にはご利用者さんの見守りも兼ね、ご様子と会話の内容・服薬状況等をお元気情報レポートという形にまとめ、離れたご家族に郵送しております。このような取り組みを、塩竃・多賀城市を中心に現在展開していまして、将来的には5年で20店舗まで拡大し、200名の働く場を創出してまいります。この数字は「私がやりたい」と考えているというよりも、社会要請だと認識しております。

 

―東北で事業を立ち上げようという思いはどこから来たのでしょう。

私は23歳の時に大学を留年していまして、人生の夏休みを長く頂きました。その時に「この先どう生きていくことが1番幸せな人生なんだろう」、「成功者に共通することはなんだろう」、「自分は何のために成功しなければならないのか」等…ばかり考えていました。振り返ってみると、今まで生きてきた中で私が一番嬉しかったのは、自分ができることを他の人にしてさしあげて、感謝の気持ちを頂くという、ごくシンプルな事でした。この無限の連鎖に包まれながら生きていきたいと思ったんです。その影響力が大きく、実現の可能性がある生き方が経営者だったんですね。その時に10年後の2011年には経営者として生きることを目標設定しました。事業は決まっておりませんでしたが、その年に、最も困っている地域で、困っていることを解決する事業を行えば“道は開ける“と考えていました。そんな中で震災が起こり、すぐにボランティアとして石巻に入り、右腕派遣プログラムを通して東北に継続的にかかわる中で、この地の課題を解決するための事業を立ち上げようと決意しました。

別の視点ですが、株主資本主義と呼ばれる今のアメリカを初めとする市場経済は限界が来ていると思うんですね。経営の第1義的目的は、利潤追求ではなく、人を幸せにすることだと考えます。人は息をしなければ生きていけませんが、息をするために生きているのではありません。同様に、会社にとって利益は不可欠ですが、お客様のありがとうの結果ですから、会社の基本的目標には成り得ません。こういった基本的価値観を実践し、いま世界で最も注目されているこの地域で、社会の公器となるような組織を創っていきたいと強く思っています。そして、日本は課題先進国だと言われていますけども、その中でも被災地域は課題先進地です。ここからこのような事業が立ち上がれば、日本全土に波及し、全世界に広がる可能性もあります。

 

―今回、食というものを切り口にしようと思ったきっかけは何だったんでしょうか。

もともと私の母親が、晩年要介護状態になりまして、口からものを食べられなくなった時から明らかに衰弱していきました。全ての病院がそうとはいいませんが、安易な点滴治療ではなく、その時のご病気や噛む力にあわせたお食事を在宅向けにお届けすることができれば、明日に繋がる命があると思っています。ですから、食の持つパワーといったものに焦点をあてていますし、私自身が親孝行しきれなかった思いを胸に、今から出会うご利用者さんを自分の親・恩師だと思って、家族愛や親孝行の輪を広げて行こうと考えております。被災地域は特に、避難生活の長期化によって、体調悪化が懸念されていて、息の長い支援が求められています。もっともっと多くのご利用者さんの健康で文化的な生活に貢献していきたいと強く思っています。

 

―お弁当の味はどんな感じなんですか。

薄味ですが、天然だしにこだわった和食中心の料理になっています。塩分制限がある方の場合、塩を減らしてしまうとすごく味気なくなるんですが、そこを天然だしの調理によってカバーしています。また、レトルトとか防腐剤・化学調味料が入っている物を極力使っていません。「自分の親に食べさせてあげたいな」と思える食事を意識しています。

 

 

 

 

―右腕が入る期間は1年間になりますが、1年後はどういう状態だといいなと思っていますか。

2店舗30名体制単月黒字化を目指します。そして、来年の11月末日までに、右腕の方には自身で1店舗たちあげるということを経験していただけていたらいいですね。そのためにも、1店舗目のセンター長としての仕事を覚えて、後任のセンター長の採用・育成を行い任せる体制を作ってもらいます。その上で、出店候補地のマーケティング・競合分析をして、この事業が必要なエリアで、行政や関係各所と連携する体制を創り、不動産開拓・メンバーの採用・育成・配置を行い、ゼロから新店舗を立ち上げていく。まだまだ余裕があれば、FC展開の仕組みづくりや周辺事業の新規企画等もガンガンやっていきたいですね、それが1年後のゴールイメージですね。

 

―各事業所で地元の人も雇用していくのですよね。

遊休資産であるシニア層および女性を積極的に採用しています。現在の1店舗目のふれあいさん(配達スタッフ)も平均年齢はなんと67歳です。1店舗あたり、だいたい15名~20名の雇用が生まれていく見込みです。

 

―地域経済への効果も大きいですね。1店舗目を塩竃に立ち上げられていますが、地域として塩竃を選んだ理由はどうしてですか。

3つあります。まず、被災地域3県沿岸部の中で、最も一人暮らしの高齢者率が高い地域がこの塩竃です。また、行政の支援が手薄く、仙台で週5回、七ヶ浜で週3回の配食における補助がある中で、塩竃は週1回しかありません。にも関わらず、NPO等の支援が全くと言っていいほど入っていないのがこの地域なんですね。次店舗は松島方面を検討しています。配食サービスが少ないようで「配達してほしい」とお問い合わせがあるんです。そういった要望があるところをマーケティング調査して、求められながら拡大していければと思っています。要望に応えていって、気づいたら5年後に20店舗になっていたというのが望ましいですね。

 

-今回、「ジョンソン・エンド・ジョンソン × ETIC.右腕派遣プログラム」で採択されて右腕を受け入れることになったわけですけれども、企業がこうして復興に向けた活動を支援するということについては、どう感じますか。

グロービス経営大学院でジョンソン・エンド・ジョンソンのケースを学びましたが、連続成長を続ける根幹には、クレドに基づく採用や手厚い人材育成と分権化経営が印象的でよく覚えています。私たちも理念経営を実践していますので、そういった尊敬すべき世界企業によるプロジェクトに採択されたことは大変光栄ですし、背筋が正される思いでおります。いつか私たちの組織も他国でそのようなプロジェクトを立ち上げられることで恩返しできたらと考えています。

 

 

-企業が長期的に東北支援に携わってくれることは本当に頼もしいですよね。今回、「健康」に寄与する事業の1つとして選ばれたわけですけど、愛さんさん宅食の取り組みが、塩竃で暮らす方の健康増進につながっていくといいですよね。

はい、健康には「身体的、精神的、社会的」の3つの健康があると思っているんですよね。噛む力にあわせたお食事を提供することは身体的な健康への貢献ですし、ただ単にお食事を届けるだけでなく、認知症サポーター研修を受けたスタッフであるふれあいさん達が、お届けの際に利用者さんと会話をして、真心をこめて配達をしていく。それだけでなく、お届けした時の会話の内容・健康状態をレポートにまとめて離れたご家族に送っておりますので、利用者さんだけでなく、ご家族へのも精神的に貢献ができているのではないかと思っています。

また、配達の際、草がぼうぼうで困っているとか、外の電球が消えちゃったとか、手すりをつけてほしいとか、生活の身の回りに対する相談ごとを聞いて、信頼できる業者さんなどをお繋ぎしています。社会的な健康って、きちんと社会サービスや福祉サービスにアクセスできることと解釈しておりますが、私たちがその橋渡しとなり、セーフティネットの網の目を細かくしていける存在になれたらいいですね。

 

-制度と制度とのはざまにいる方が多くいらっしゃることは、配達などをやっていると実感されそうですね。右腕で入る方が、この事業を通してやりがいを感じていけるのはどういった部分でしょう。

上から言われてやらされる仕事でなく、自主的に考えながらやっていただきます。かといって放任ではなく、話し合いの中で目標設定してやっていきます。右腕の方には、将来的には経営幹部になっていただきたいと真剣に思っています。そのためにも、マネジメントされる側の気持ちを知ってもらうために、調理も配達も経験していただき、その後にセンター長として調理部門と配達部門をとりまとめ、関係各所に営業に行ったり、お店をまるごとまかせ、売上がきちんとあがって事業が継続するようにハンドリングしていただきます。もちろん、売上利益と報酬も連動していく。それがクリアできたら、次は次期センター長を自らが採用し、その方を育てて、右腕さんは次の店舗を展開するところをやっていただく。自分のやったことが成果としてダイレクトにかえってくるのが醍醐味だと思います。

そのためにも、大前提として理念への共感、経験はなくとも震災復興に対する強い想いがあり、献身的・利他的な方、スタートアップという変化が激しく業務量の多い環境を自らの成長につながるチャンスと捉え、局面打開へ奮闘できる方と一緒に走っていきたいです。私自身も、もともと右腕派遣プログラムを通して一般社団法人で右腕を経験してきましたから、他のプロジェクトリーダーよりも右腕さんの気持ちはよくわかります。月に1回でも2回でも、とことん話しあう場を設け、フォローアップしながらやっていきたいですね。

 

-最後に、右腕になってみようかなと検討されている方へのメッセージをお願いします。

まだ見ぬ右腕さんへ。
人生は選択です。機会に飛び込み、機会によって自らを変え、成長していきませんか。
人は成長した分しか貢献することができません、持たざる者は与えられないのです。
お会いできることを楽しみにしています!共に成長し、貢献の人生を歩みましょう!

 

-ありがとうございました。いい方とご縁ができるのが、楽しみですね。

 

聞き手:真壁さおり(NPO法人ETIC.コーディネーター)/文:田村真菜(NPO法人ETIC.)

 

愛さんさん宅食(塩釜市)の右腕募集要項

 

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