HOME

特集記事 たくさんの避難所をまわって見えてきたもの

リーダーがビジョンを語る9042viewsshares2011.07.10

たくさんの避難所をまわって見えてきたもの

宮城県登米市香林寺。この場所につなプロの拠点がある。

つなプロは、避難所での課題や困りごとを発見して専門性を持つNPOなどへつなげることをミッションとする合同プロジェクト。

お寺と聞いていたので、薄暗いお堂をイメージしていたけれどとても立派な建物だった。中に入ると雑魚寝ができる広いスペース。多いときには100人以上滞在していたという。震災が起きてすぐ、宮城県に駆けつけた稲葉さんを訪ねた。【つなプロ・稲葉隆久(1)】

-今、どうしてここにいることになったのか、まずは経緯を教えていただきたいです。

稲葉:経緯ですか。

-そうですね。説明する上で、タイミングのいいところから教えてください。

稲葉:そうですね、僕は大学を中退したんですね。でも8年間通ったんです。

-8年、通って中退。

稲葉:いや、正確には7年間通って中退して。それで、また1年間置いて、もう1回大学に入ったんです。

-そうかそうか。思ったより長いですね、大学生活。

稲葉:足掛け9年です(笑)。

稲葉:そもそも僕早稲田の体育会の野球部だったんです。学校はあまり行ってなかった。そのあとにカタリバをはじめて、7年間やってから大学に再入学しました。それで、去年の後半の半年間は大学生として大学に通っていたんですね。それで、まあ2月、3月となって卒業となって。大学卒業できました、ということをいろんな人に報告して。

-うん。

稲葉:さてどうしたもんかっていうとこで。カタリバにもどるという選択肢も、自分で何かをはじめるという選択肢もあったんですけど。ちょっと迷っていたところでこの震災があったんですね。

稲葉:震災があって何日間はなんかモヤモヤしつつ、「なんかできないかな」とか考えていました。「自分なりにできること、あるんじゃないか」とモンモンとしつつ。そこに電話があってつなプロに誘われたんです。「そりゃもう入ります!僕でお役に立てるなら」ということで、つなプロの先遣隊として3月17日に宮城県にはいりました。

-なるほど。声がかかったときはどういう気持ちでしたか。

稲葉:何しようかなと思ってたときだったんで、「あ、やることできた!」って思いました。震災は個人で関わるにはあまりにも「弱いな」と思ってましたし。自分のことを使ってもらえるのであれば、ぜひ参加しようと思いました。しかもそれがカタリバでやってきたことを評価してくれて声をかけていただいた話だったので、それはもう、うれしいなーと思って。

-うれしい。

稲葉:はい。自分の力を必要としてもらえているのであれば、ぜひとも使ってくださいという感じでして。

-先遣隊として現地に入ってみてどうでしたか。被災地というものに対してテレビなどで事前に見ていて感じたものから、はいったあとって何か変わりましたか。

稲葉:まあそうですね、肌で感じたことがありました。余震もばんばん来てましたし。電気なんかついてなかったですし。暗かったですし。寒かったですし。いや過酷だなーと実に思いましたね。

-過酷。

稲葉:はい。

-1日目くらいからそう思ったの。

稲葉:いやもう入った瞬間からそう思いました(笑)。僕、生まれが九州なので寒いことにも、こたえたんですけど。仙台の市街地はほんとまっくらで。ああ、これはすごいところに来たなって。あとは震災直後も車が動いてなかったので、雰囲気が異様だったなっていうのがあって。

-真っ暗で、車も動いてない。まったく光とかないんですか。

稲葉:あるんですけど、仙台市街地はもっともっと明るかったんだろうなーって。

稲葉:まあ食うものもないですし。自分たちで持っていったもの食ってましたけど。そのあといろんな場所をまわっているときも、なんというか、画面の外側があるっていうと変ですけど。

-テレビ画面の外側があるということ?

稲葉:そうですね。やっぱあの枠の中でとらえられたことを僕たちはずっと見ていました。当たり前なんですけど、立ってみると画面の外側がずっと広がっていて。瓦礫の山というのももちろんいっぱいあって。どーんと、大きな船があるところだけじゃない。で、そこがまずびっくりしましたね。

稲葉:あと、こっちに来てすぐ炊き出しに行ったんですけど。炊き出しに行くときに「治安が悪いぞ」「武器を持っていけ」「バールを持って行け」などと言われて。それでバールを忍ばせて炊き出し行ったんです。そのときは何もなかったのですが、あらためていろんな人に聞いてもやっぱり治安は悪かったみたいで。

-悪かったんですか。

稲葉:はい、傷害事件とかあったみたいです。入ってすぐのときも異様だなと思ったんです。特にコンビニもやぶられてるし、ATMも引っ張り出されてるし。本当に「ああ危ないんだなあ」って思いましたね。最近、地元の方たちとちょっと飲む機会があったんですけど。最初3日間くらいは水浸しで外に出れなくて。出れるようになったら今度食い物が手に入らない。その人たちも「コンビニから物とった」とかいろいろおっしゃってましたし。まあ、その状況を見たら当然だろうなと思いました。

 

■関連インタビュー:大きな余震を経験してから【つなプロ・稲葉隆久(2)】

■関連インタビュー:復旧とか復興とかじゃなくて創造。もう元には戻んない。【つなプロ・稲葉隆久(3)

この記事をシェアする

その他の記事を見る

自分たちが持っている技術を集結して、浜の活性化を目指す

現場に潜入!5145viewsshares

地域のお母さんのアイデアを商品に!課題解決ワークショップ(NPO法人Peace…

リーダーがビジョンを語る4766viewsshares

過疎地の課題を解決するのは社会的弱者のチカラ!経営力ある右腕人材と描く未来〜ロー…

リーダーがビジョンを語る4774viewsshares

事業を生み出し、住民ゼロの町に帰還のサイクルをつくる

リーダーがビジョンを語る7687viewsshares

THINK TOHOKU 2011-2021 これまでの5年を振り返り、これからの5年をともに考えていきます。

THINK TOHOKU 2011-2021 これまでの5年を振り返り、これからの5年をともに考えていきます。

右腕希望の方々向け個別相談会開催中 申し込みはこちら

右腕希望の方々向け個別相談会開催中 申し込みはこちら

SITE MENUサイトメニュー