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特集記事 OCICA作りを通して、浜のお母さんに笑顔が増えた。

私にとっての右腕体験6137viewsshares2012.09.04

OCICA作りを通して、浜のお母さんに笑顔が増えた。

石巻市街地から車で40~50分のところに位置する牡鹿半島牧浜集落。去年から、この半島の女性たちと一緒に鹿角のアクセサリーづくりを始めたつむぎやのメンバーの一人が、齋藤睦美さん。高校までを石巻で過ごし、大学入学と同時に上京。石巻がおもしろくなくて東京に出た彼女が、2011年9月の大学卒業後、故郷で活動した半年間のことを話してくれました。【地域の未利用資源活用とコミュニティ再生プロジェクト(つむぎや)・短期プロジェクトスタッフ・齋藤睦美】

—いろんな良いタイミングが重なって、2011年9月から石巻に戻ってきて、ちょうど半年くらいですね。どんな半年でした?

えー、なんだろう。とにかく楽しくて、すごい幸せでした。いろんなことを学びつつも、楽しみながらアウトプットができた半年でしたね。なにより、OCICAという商品が世の中に出た。すごいことだな、と思っています。

-石巻に戻ってくるまでの学生時代のことを聞かせて下さい。

入学して最初の2年半は部活に打ち込んでいて、3年時には休学して海外へ旅行、学生5年目の去年、2度目の就職活動をしている途中に地震が起きました。
発災を知って、今すぐに石巻に帰りたいと思った。でも、今自分がやるべきことは何かなって考えた時に、石巻がこれからどうなるかわかんないし。目の前にある自分がやらなきゃいけないことは、就職先をまず決めることだな、と腹を括った。それで決まらなければ、石巻に戻ろうと。最後に残った一社で、内定が決まりました。

—それが、去年の6月頃ですね。内定後に、つむぎやの代表である友廣さんと出会ったと聞いています。

シブヤ大学で友廣さんが講師だった授業に参加したのがきっかけです。友廣さんの経歴に興味があって。2011年3月13日に予定されていた授業が、地震で6月に延期になりました。
もともとマザーハウスやHASUNAなど、ものづくりと社会起業を両立させている取り組みには興味がありました。でも、自分がそこで一緒にやる理由が見つからなかった。友廣さんの話を聞いて、地元・石巻で、泥かきのボランティアじゃない、私にしかできない役割がある気がしました。

そうして、9月からつむぎやのメンバーに。

あの頃は、知り合いの人に頼んで鹿の角を加工して、仙台のパルコで売ってみたものの、一個も売れなくてどうしようかっていう状態でした。加工技術もなくて、サンプルも自分たちでつくれない。親戚の三浦さん(石巻・河北に住む鹿の猟師さん。何かとつむぎやメンバーを気にかけて助けてくださっている)に道具を借りてサンプルをつくって、それを見せて浜のお母さんたちを訪ねて、一緒に作りませんか?と声をかけて回っていました。
私の母親が石巻市でずっと教師をやっているので、知り合いでキーマンになりそうな人を何人かあげてもらって。その伝手で訪ねたのが今、一緒にやっている牧浜のお母さんたちです。

—この半年間、どんな場面が印象的ですか?

状況が動いていく瞬間があって。前に進んだ!っていう瞬間にわくわくしました。最初の頃だと、やっぱり牧浜のお母さんたちと出会った時は、嬉しかったですね。それまでに、いろんな浜を訪ねたのですが、タイミングや状況が合わなくて一緒にやろうとはならなかったんです。ちょっと不安もありながら訪ねてみたら、みなさんあったかく迎えてくれて、やりましょうってなったときは、すごい嬉しかった。
最近だと、始めの頃には「できない、辞めたい」と言っていた年配のお母さんたちが、楽しそうに、「やってれば、なんとかなるんだよねー」って言ってくれて。ポジティブな気持ちになっているのが伝わってきて、それが嬉しいです。
例えば、電動糸のこを使う作業は、ちょっと難しいんですよね。これまでは、それを一人のお母さんにやってもらっていましたが、それが負担になってしまっていて。どうしましょうか?ってお母さんたちに投げかけてみたら、分業するんじゃなくて、全部の工程を一貫して一人でつくってみたい、という声が70代のお母さんたちからも出て。それ以前は敬遠していた糸のこの練習を始める方が一人、また一人と増えてきました。

—なんでそうなるんだろう?

これってはっきりした理由はわからないんですけど、私がいない時期があったり、一緒にやっていた鈴木悠平くんが怪我したことがあって。じゃあ、私やるわよ、っていうお母さんが出てきた。私たちがいなかったことで、だったら自分たちでやんなきゃ、ってなったのかなぁって思います。

—関わってきた中で、特に印象的なお母さんはいますか?

いますね。その人は、もともと別の浜に住んでいた人。小さい集落だから、別の場所から来るというのは精神的に大変だったと思う。それでもほぼ毎回来ています。細かい作業が少し苦手で、作ってもらった商品もNGを出さなきゃいけないことも結構あって。でも年末にみんなでふりかえりをした時、涙ながらに、「私はみんなの足を引っ張っているし、やめようと思ったこともあったけど、ワークショップの場が楽しい。あきらめずにやる分だけ、できるようになっているし、いまだにNGもでるけれど、商品なんで、がんばらなきゃね。」と言ってくれて。なんとなく、前より笑顔が増えた気もします。

—この半年間の経験が、今後どんなふうに繋がっていくと思いますか?

私が半年間にやっていたことは、最初の商品の試作品づくりや生産管理です。その仕事内容よりは、友廣さんに教わった考え方の部分が活きてくるかなと思います。
たとえば、友廣さんがよく言っていたことで印象に残っていることは、「常に等身大であること」。変に自分をできるように見せずに、その時に自分ができることをやるのが大事、と言っていて。これから私が就職して仕事を任せてもらった時も、自分のキャパシティーを越える仕事や、できないのに「できます」って引き受けちゃって、「やっぱりできない‥」とか、あると思うんですよね。そういう時に、自分ができることと、できないことを知っておくって大事だと思うんです。
あとは、「目の前にある人、あるものを大事にすること」。その時々の状況の中で何ができるか考えて、役割をつくっていく。そういう考え方は、これからも活きてくるだろうなと思っています。そういえば、鹿角の加工していた道具が、むかし歯科助手でバイトしていた頃の道具と一緒で。あー、つながったなって思いました。(笑)
就職したら、働き方も生活のリズムも変わるだろうし、もしかしたら大切にしていたことも大切にできなくなるかもしれないけど、マイナスに捉えたくはないなと思っていて。それすらも自分のものとして楽しめるようにしていきたいなと思いますね。

—震災をきっかけに、東北に帰ろうかどうしようか迷っている出身者の方にも、よくお会いします。帰ってみて、どうでしたか?

私は、戻ってきて本当によかった。一回は、石巻を出たくて出た。戻ってきても、おもしろくないだろうなと思っていたし。
でも、震災があって、今戻らないと一生戻らないだろうなと思って、戻ってきました。結果的に、石巻の良いところがいっぱい見つかって、好きになれた。戻ってきて思うのは、私は外の人であり、中の人なんですよね。ずっと地元にいた人とはちょっと違う。何事もフラットな目で見えるというか。そういう両方の目線を持っている人がもっと増えれば、新しいことが生まれていくときにうまくいくんじゃないかな。戻ってきたら、役割があると思います。

—OCICAは、これからどうなっていってほしいですか?

理想をいえば、お母さんたちがOCICA制作の職人になってくれれば、すごいなと思います。でもそれと同じくらい、もともとやっていた仕事に戻れるたら嬉しいですね。前みたいに、牡蠣むきの仕事ができるようになったらいいな、と思っています。

—最後に、チームメンバーにメッセージをお願いします。

なんだろう…みんな、それぞれ違うキャラクターと得意分野があって、いろんなことを教わりました。
同い年の鈴木悠平くんは、兄弟みたいな感じで。正反対なんですよ、得意分野が。悠平くんは、物を書いたり調べたりするのは得意。でも私は本も読まないし、文章も書けない。逆にお母さんたちとのコミュニケーションは、主に私が率先してやっていて、お互いに補いあっていたのかなと思います。悠平くんが、これからどうなっていくか、本当に楽しみです。
多田さんには、どういうふうに仕事するかを教えてもらいました。効率化がすごい得意だから、時間の使い方とか、エクセルとか。友廣さんは…背中で語る存在でしたね。(笑)
うーん、やっぱり、「ありがとう」ですかね。またどっかで、一緒に働けたらいいな。

聞き手・文::辰巳真理子(ETIC.スタッフ)
※インタビューは、2012年3月26日時点のものです

“OCICA”出版プロジェクト 〜石巻市牡鹿半島、小さな漁村の物語〜(motion gallery)

一般社団法人つむぎやでは、OCICAができあがるまでのストーリーを出版するためにクラウドファンディングを
行っている最中です。500円から応援できますので、関心をお持ちになられた方はぜひご覧ください。

OCICA ~石巻・牡鹿半島、小さな漁村の物語~(シブヤ大学)

9月15日(土)15:30~18:30にイベントが開催され、このインタビューに登場している齋藤睦美さんも
ゲストとして参加されます。

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